【合格体験記】428点で突破。「60点でいい」から始めた診断士一次試験の合格戦略(第1回/全3回)
プロフィール
- 名前:齊木達也
- 合格年度:2025年度
- 年齢:36歳
- 受験期間:約5年
- 勉強方法:一次試験は独学中心、二次試験は独学を経てTACを受講
- 一次試験得点:428点(2025年度)
- 二次試験得点:249点
- 一次試験の主な教材・ツール:TAC Webトレーニング、まとめシート、過去問
- 二次試験の主な教材・ツール:TAC講義・演習、過去問、イケカコ、30日完成、全知全能、中小企業白書など
- 職業・経歴:教育業界で個別指導講師、講師管理、営業などを経験。その後、新規事業部門を経て経営企画職
- TAC講師:辻井修二先生

2020年、コロナ禍をきっかけに中小企業診断士一次試験の勉強を始めた齊木達也さん。最初の一次試験は1年で突破しました。しかし、その後の受験生活は順調一辺倒ではありません。
二次試験に合格できないまま再び一次試験に挑むことになり、「なめすぎてて、多分勉強せずに行った」結果、不合格。「こんなもんか」と感じていた試験に、改めて向き合うことになりました。
そこで齊木さんが選んだのは、満点を目指す勉強ではありませんでした。「60点でいい」。その割り切りは、どのような受験戦略につながったのでしょうか。
「夢だけ語っていても」――教育の現場から経営を学ぼうと思った理由
—中小企業診断士を目指したきっかけは何でしたか。
「診断士の勉強自体は、令和2年、コロナのちょうどど真ん中ぐらいからスタートしました。
きっかけは、コロナで結構時間があったっていうところです。
自分自身、教育業界でずっと働いていて。教育業界って、思いを熱く持っている方は多いんですけれど、そこに数字が乗ってこない。
夢だけ語っていても、という現場をたくさん見てきました。
目の前のお子様と関わりつつも、これをビジネスとして成り立たせるためには、という視点も勉強したいなと思ったのがスタートでした」
学生時代に個別指導のアルバイト講師を経験し、そのまま教育業界へ進みました。社員になってからは、大学生講師の管理や営業活動などを担当していたといいます。
当初から「診断士資格を仕事で使おう」と明確に決めていたわけではありません。現場の仕事を続ける中で、自分自身の成長に停滞を感じ、別の視点を身につけたいと考えたことが出発点でした。
その後、診断士の勉強をきっかけの一つとして新規事業部門を経験し、現在は転職して経営企画の仕事に就いています。
—勉強を始めた頃、一次試験をどう見ていましたか。
「目の前で学生たちが勉強している姿を見て、それを促す側だったので、初めは結構楽しいなっていうのがありました。
一次試験も最初はスルスルっと合格して、割と『あ、こんなもんか』って感じだったんです。
二次試験がとにかく受からなかったもんで、そこから結構かかったなっていう感じですね」
7科目という試験範囲の広さにも、当初はそれほど圧倒されなかったといいます。
初回の一次試験は1年で突破しました。平日は2時間ほど、土日は5~6時間ほど勉強していました。ただし、本人が振り返る勉強法は、現在の受験生にそのまま勧めるような完成されたものではありません。
—最初の一次試験では、どう勉強していましたか。
「一年目は、もうとにかくインプットのみだったと思います。
インプット教材をとにかくこなすみたいな感じで。
過去問も、多分一回ぐらいしかできなかったと思うんです。3年分ぐらいを。
一年目はアウトプットは全然やってなかったと思います」
当時利用していたのは、本人の記憶では「診断士ゼミナール」という低価格の通信講座だったといいます。
模試も受験しましたが、結果は芳しくありませんでした。
—模試の結果はどう受け止めていましたか。
「いつも余裕のE判定というか。一番下がEですよね。
Dが一個もつかなかった記憶があります。LECとTACを受けたと思うんですけど」
模試ではE判定。それでも本試験では一次試験を突破しました。
結果だけを見れば「独学中心の勉強で、1年で簡単に受かった」とも見えます。しかし、本人はこれを「ビギナーズラック」「ラッキーだった」と振り返ります。
しかも、その後に二次試験で合格できず、再び一次試験と向き合うことになります。そのとき、最初の合格によって生まれた認識の甘さが表面化しました。
—一次試験に再挑戦したとき、何が起きましたか。
「一番きつかったのは、多分令和4年だと思うんですけど、そこで一次、一発で受からなかったんですよね。
なめすぎてて、多分勉強せずに行ったんですよね。
そこで結構折れて、やめるかなって思ったんですけど。
なんか火がついたじゃないですけど、ここまで時間投資して、成果ゼロじゃちょっとあんまりだなって思った。
結構へこみましたね。自分の認識の甘さというか、見通しの甘さというか、すごい覚えてますね」
最初に一次試験を突破した経験が、「次も何とかなる」という判断につながった部分はあったのかもしれません。
少なくとも齊木さん自身は、この失敗を「認識の甘さ」「見通しの甘さ」と表現しています。
この発言からは、一次試験に対する考え方が、「一度受かった試験」から「きちんと準備して取り切る試験」へと変わった印象を受けます。
「得意科目はない」――60点ぴったりが一番コスパがいい
—苦手だった科目は何でしたか。
「情報。情報が嫌いでした。
あそこまで専門的なものってないですし、積み重ねにならない科目だったので、ちょっと嫌ですね」
一方で、「得意科目は何か」と聞かれると、齊木さんの答えは意外なものでした。
—得意科目は何でしたか。
「それがミソで。得意科目は、ないですね。
6割取りゃいいって思ってたので。
点数を見て、これが点良かったね、みたいなのはあったかもしれないですけど、とにかく6割ぴったりが一番コスパがいいって思ってたので。
あまり得意科目を作ろうとはしてなかったかもしれないですね」
得意科目で80点、90点を狙うのではありません。
苦手科目を完璧に克服することも目指しません。
中小企業診断士一次試験は、総点数の60%以上を取り、かつ40%未満の科目を作らなければ合格できます。
齊木さんは、このルールをそのまま自分の勉強戦略に落とし込みました。
—苦手な情報システムにはどう対応しましたか。
「絶対取るべきものは4割でいいっていうのは、ずっと思ってたので。
4割確実に取って、あと選択肢を二択まで切ったら、期待値的には点数が取れるっていう形で勉強してました。
とにかく4割を確実に取る。4割を取って足切りをなくすっていうのは、結構戦略的にやってたかもしれないですね」
「苦手科目を得意科目に変える」のではなく、「足切りを回避できる状態にする」。
これは、勉強から逃げるという意味ではありません。
むしろ、自分が何点を取れば合格できるのかを先に決め、限られた時間をどこに配分するか判断する方法でした。
—選択肢を二択まで絞るために何をしましたか。
「間違いの引っ掛け方のポイントっていうんですかね。
そこに丸とかチェックをつけて、後から見直して。
こういうところは気をつけないといけないよね、っていうところは結構意識的にやってたかもしれないですね」
問題を解いて正解・不正解を確認するだけではありません。
「どこに引っ掛けがあったのか」を残し、次に同じような選択肢が出たときに切れるようにします。
分からない問題をゼロにするのではなく、正答の可能性を少しずつ高めていきます。
「二択にさえ絞れれば50%」という考え方も、60点を狙う戦略の延長線上にあります。
「二択にさえ絞れれば50%」――428点につながった選択肢の切り方
—2025年度はどの教材を使いましたか。
「令和7年に関しては、TACのWebトレーニングと、まとめシートと、あと過去問ですね。
それで、なんとか今年はいけたって感じでした」
齊木さんは一次試験対策としてTACの本科講座に通っていたわけではありません。
二次試験の演習を申し込んだことで、7科目分のWebトレーニングを利用できるようになり、それを一次試験対策に活用しました。
ここでも「この教材を使ったから受かった」という単純な話ではありません。
初年度のインプット中心の勉強、一次試験再挑戦での失敗を経て、最終的にはWebトレーニング、まとめシート、過去問という複数の手段を組み合わせました。
その使い方にも、塾で受験指導に携わってきた経験が表れています。
—暗記するときは、どんな工夫をしましたか。
「暗記は得意ですね。
あんまり長期には残らないんですけど、短期の詰め込みみたいなのはすごく得意です。
それこそ受験勉強を教えてたのもあって、語呂合わせを作ってやったりとかはしましたね」
長期間記憶に残すことよりも、試験日に必要な知識を取り出せる状態にします。
そのため、情報を圧縮する方法も工夫しました。
—情報はどのように整理していましたか。
「長い言葉とかも、頭文字の一個だけ覚えるとか、そんな感じです。
例えば中小企業政策をやるにしても、基盤整備機構だったら『基盤』だけ覚える。
その『基盤』で出てくるものを、ツリーみたいな形にして覚えたりとかしてました。
とにかくA3一枚に情報量を収めて、それを何回もファイナルペーパーみたいな形で見る。
直前1カ月とかは、そういうことをやってました」
すべての知識を同じ密度で覚えるのではありません。
一つのキーワードを起点に関連情報を引き出せるようにし、それをA3一枚に集約します。
「60点でいい」という考え方は、単に目標点を低く設定することではありませんでした。
何を確実に取るのか。どこまで覚えるのか。分からない問題を、どこまで絞り込めるようにするのか。
合格に必要な状態から逆算し、自分なりの判断基準を作ることでした。
—直前期は何を一番意識しましたか。
「絶対に出るっていう部分のところと、選択肢の切り方みたいなところは結構意識してやったかもしれないですね。
二択にさえ絞れれば50%だっていうふうに思ってたので」
その結果、2025年度の一次試験は428点。
合格基準の420点を8点上回りました。
本人が「6割ぴったりが一番コスパがいい」と話すように、圧倒的な高得点を目指した結果ではありません。合格するために必要な点数を見極め、自分なりの方法で取り切った結果でした。
—428点と分かったとき、どう感じましたか。
「結果を確認したのは職場でした。ある程度自己採点していたので、大丈夫だとは思っていましたが、まずは『マークミスがなくてよかった』と思ったのを覚えています。
ただ、試験が終わってからは、合否にかかわらず二次試験の勉強にのめり込んでいました。一次試験がゴールではないので、合格を確認しても浮かれず、すぐに二次試験へ気持ちを切り替えていました」
428点という結果にも、齊木さんが大きく浮かれることはありませんでした。目標はあくまで、その先の二次試験合格だったからです。
もっとも、一次試験との向き合い方が最初からここまで明確だったわけではありません。
最初に一次試験を突破したときは、「こんなもんか」と感じました。その後、十分に準備せず再挑戦して不合格となり、自らの「認識の甘さ」「見通しの甘さ」と向き合うことになります。
その経験を経て、たどり着いたのが、「得意科目を作らなくていい」「60点でいい」「まず4割を確実に取る」という考え方でした。
一度合格した経験も、再挑戦での失敗も、その後の勉強の組み立て方を変える材料になりました。そして2025年、428点で再び一次試験を突破したときには、すでに視線は次へ向いていました。
「ゴールはここではない」。
齊木さんにとって、本当の長い戦いは一次試験の先にありました。
次回予告
一次試験では「60点を取ればいい」と割り切り、合格点から逆算した齊木さん。しかし、本当の壁はその先に待っていました。二次試験では独学を続けても結果が出ず、やがてTACへ。そこで手に入れたのは、知識だけではなく「考えることを極力ゼロにする」ための自分自身の「型」でした。
次回は、249点で二次試験を突破するまでの試行錯誤と、「二次試験の最適教材は中小企業白書」という独自の勉強法に迫ります。
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