二次試験終了後も「落ちる前提」で勉強を続けた。TAC講座の申込直前――それでも諦めない覚悟を決めていた。そして迎えた合格発表の日、「信じられなかった」。

完全禁酒、テレビ断ち、スマホ封印――犠牲ではなく、選択した時間。子どもたちに見せた父親の背中。会社の反応は薄いが、本業にも活きている中小企業診断士の知識。「仕事のダラダラがなくなった」――今も続く受験時代の習慣。そして、海外ビジネス×診断士というこれからの挑戦。

受験生へ贈る最後のメッセージは、「点数に囚われず、自分の成長機会として」。

このインタビューは全3回です。この記事は第3回・合格後編です。

前回:第2回|60事例解いても伸びなかった二次試験で、2週間前に見えたもの

不合格に備え、合格発表まで勉強を継続

――二次試験終了後、どのように過ごしていましたか。

落ちると思ってたので、ずっと勉強してました。事例Ⅳでのパニックや予備校解答との乖離から、「落ちる」と思った根拠は明確だったんです。それでも、試験後も二次の勉強を続けました。

――なぜ合格発表を待たずに勉強を続けられたのですか。

また次の講座から始めると時間が空くので、一次資格の合格の権利がある3年間の猶予期間の間は、やろうかなと思っていました。その権利を無駄にしたくないという思いが自分を動かしていました。

――TACの講座申込も検討していたそうですね。

合格発表で多分落ちたら申し込もうと思っていたので、落ちたら即座に申し込む準備まで整えていました。

――もし落ちていたら、翌年は何をするつもりでしたか。

実はないんですよね。60事例やり尽くして、もうやる問題がなかったので。辻井先生からは「古い問題やってもしょうがない」と言われていたのですが、もう1回解いた問題を解き直すしかなくても、毎日少しずつ触れ続けるつもりでした。継続だけが唯一の戦略という覚悟でした。

TAC再申込直前に知った合格

――合格を知った時、どう思いましたか。

絶対に落ちると思ってたんで、まずなんか、かなり信じられなかったですね。嬉しさよりも困惑というか、「本当に?」という感覚が先に来ました。ちょうどTAC講座の申込直前で、もう1年やる覚悟を決めていたのに合格していたので、なんか逆に「え?」って感じでした。1.5年間、1日も休まず勉強を続けたその全てが、この瞬間報われました。

禁酒・テレビ・携帯を手放し、学習時間を確保

――完全禁酒していたお酒を、試験当日の夜に解禁したそうですね。

二次試験当日の夜、久々に酒を飲みました。「多分無理だな」と思いながらも、強烈な解放感がありました。1.5年間我慢し続けたお酒の味は格別でした。

――お酒だけでなく、他にも手放したものがありましたか。

テレビとか、携帯をいじらなくなりましたね。勉強してない時って、自分が持て余してる時間が多いので、携帯見たり、YouTube見たり、テレビ見たり、そういう時間が多かった気がするんですよね。

――これらは「犠牲」だったと思いますか。

犠牲ではないんですけど、そういったものがなくなりましたね。持て余していた時間を有効活用できるようになりました。

1年半の学習を見た子どもから「お父さん、すごいね」

――子どもたちの反応はどうでしたか。

「すごいね、お父さん」って感じでした。多感な時期の子どもたちが父親の姿をどう見ていたかは分かりませんが、「すごいね」という言葉が返ってきました。

――子どもたちの勉強姿勢に変化はありましたか。

僕が勉強してるのを見ることで、子どもがもうちょっと勉強するっていうのも、受験のきっかけの1つだったんです。実際に変化があったかどうかは別として、1.5年間見せ続けた父親の背中、それだけで十分だったのかもしれません。

――家族の理解は大きかったですか。

妻とかは昔から「なんかやったら?」って感じで言っていて、始めたら「ああ、頑張んな」という感じでした。反対されるどころか、むしろ背中を押してくれて、勉強を始めてからもすんなりと受け入れてくれました。家族の理解と応援があったからこそ、1.5年間走り続けることができました。

会社の反応は薄くても、仕事の思考プロセスは変わった

――合格後、会社での反応はどうでしたか。

結構薄いですね。「おめでとう」みたいな感じで。弁護士に受かったとか、そういったのではないので、診断士の知名度の低さを実感した瞬間でした。

――社内で診断士目線で発言しても、理解を得るのは難しいですか。

正しそうなことを言っていても、なかなか理解が得られにくいです。「中小企業診断士として」と言っても「へー、そうなんだ」という反応ですね。でもそれは想像がついていましたし、わかる人はわかる、それで十分だと思えます。

――それでも取って良かったと思えるのはなぜですか。

物事の考え方、思考のプロセスが変わったからです。見方がやる前とやった後で違ってきています。周りが認めるかどうかではなく、自分が変わったこと、それが何よりの成果でした。

受験で身についた優先順位づけが、仕事にも定着

――受験中に身についた習慣で、今も残っているものはありますか。

仕事をダラダラするのがなくなりましたね。以前は残業が結構夜遅かったんですけど、勉強しなきゃいけない時間っていうのが自分の中にあったので、取捨選択と、優先順位のつけ方、そこが変わったかなと思ってます。

――この効率的な時間の使い方は合格後も続いていますか。

それはあると思いますね。診断士受験がもたらしたものは、資格だけではなく、働き方や時間の使い方、人生そのものが変わったのだと実感しています。

海外ビジネスと診断士を掛け合わせた今後の挑戦

――合格後、どんな診断士活動を始めていますか。

現在、副業申請の準備を進めています。焦らず着実に、活動は少しずつ増やしていきたいなと。まずは部会に入会し、研究会で学びながら活動の幅を広げていく予定です。

――海外一筋のキャリアを、どう活かしたいですか。

ずっと海外しかやっていないので、中小企業の海外進出支援や、海外企業の日本進出支援、これが私の武器だと思っています。将来的には独立も視野に入れています。企業内診断士として会社に在籍しながら、自分の会社を作る構想もあります。

――企業内診断士として、まずは社内でどう価値を提供していきますか。

新規事業の事業戦略策定や計画ですね。海外目線×診断士の知識という掛け合わせを強みに、まずは企業内でのコンサルティングで実績を作っていく戦略です。

合否だけでなく、自分の幅を広げる成長機会に

――1.5年間、1日も休まず走り続けて、今受験生に伝えたいことは何ですか。

診断士という資格は、どんな業種でも役立ちますし、幅広い知識が得られます。受験中はイメージしにくいかもしれませんが、勉強すること自体に価値があるという真実を、身をもって知りました。

合格という目標はもちろんあるんですけど、そこを合格・不合格関わらず、社会人として仕事をしていく中での自分の幅を広げる成長機会として、点数とかに囚われずに頑張っていただければと思います。合格はゴールではなく通過点です。

Tさんの合格体験記・全3回

  1. 第1回|一次試験 ― 情報システムを深追いしなかった判断と1.5年間の学習
  2. 第2回|二次試験 ― 60事例解いても伸びず、2週間前に見えたもの
  3. 第3回|合格後 ― 「落ちる」と思っていた合格発表と、その後【現在の記事】

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kutsumi
経済産業大臣登録中小企業診断士。 大手食品メーカーとスタートアップ企業で30年以上にわたりペット関連事業に従事。専門領域はマーケティング、新規事業参入、新製品開発支援。