中小企業診断士 令和7年度 事例Ⅱの再現答案|合格者2人の判断を比較【第2回】
第1回:80分の解答プロセス | 第2回:令和7年度の再現答案 | 第3回:事例Ⅱの勉強法
2人とも、第2問を見てダイナミックプライシングを思い浮かべました。それでも、75点のK&Tコンサルタントは低価格と高価格の両方を答案へ入れ、62点のジョギング診断士は高価格側だけを残しました。同じ知識を持っていても、本番で一般論をどう当てはめるかによって答案は分かれます。
令和7年度の事例Ⅱは、スポーツマッサージ店を題材に、3C分析、価格戦略、顧客情報、動画コンテンツを問いました。設問だけを見ればオーソドックスでも、80分の本番では「候補が多すぎて150字に入らない」「知識は浮かんだが、どこまで書くか決め切れない」という取捨選択が続きます。
第2回では、事例Ⅱ62点のジョギング診断士と75点のK&Tコンサルタントが、第1問から第4問まで何を見て、何を候補にし、どこで判断を分けたのかを追います。2人はともにTAC池袋校で辻井先生のクラスを受講しました。同じメソッドと知識を持っていても、完成する答案は一つではありません。
登場者プロフィール
ジョギング診断士
令和7年度事例Ⅱ62点。二次試験2回受験。TAC池袋校の辻井先生のクラスで学び、教わった考え方を自分が処理できる形へ調整した。
K&Tコンサルタント
令和7年度事例Ⅱ75点。二次試験5回受験。同じく辻井先生の指導を受け、複数の答案候補を残す型と、過去問から蓄積した知識を本番で使った。
| 設問 | 字数 | 配点 | 公式の出題趣旨(要約) |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 150字 | 15点 | B社内外の経営環境を、顧客・競合・自社の3つの視点から分析する能力 |
| 第2問 | 100字 | 25点 | ターゲット層を意識した価格設定と、ダイナミックプライシングによる顧客の分散化の助言 |
| 第3問 | 150字 | 30点 | 顧客との長期的な関係性を高める顧客情報データベース構築の助言 |
| 第4問 | 100字 | 30点 | 新規顧客獲得のためにオンラインで掲載する効果的な動画内容の助言 |
※設問、字数、配点は令和7年度事例Ⅱの公式問題、出題趣旨は日本中小企業診断士協会連合会の公表資料をもとに要約。
第1問|150字で問われたのは、見つける力より捨てる力だった
第1問は、3CでB社の現状を150字以内にまとめる15点の問題です。候補が多く、2人とも「何を落とすか」に悩みました。
3Cの配分を先に決めても、候補は収まり切らない
インタビュアー: 第1問を見たとき、どのように150字を配分しようと考えましたか。
K&Tコンサルタント: 本来は顧客3、競合2、自社5くらいの感覚で書きたかったのですが、顧客と競合の候補が多すぎました。実際には顧客4、競合4、自社が1.5くらいの感覚です。厳密な比率ではありませんが、終わってから、自社が薄すぎたのではないかと怖くなりました。
インタビュアー: しかも、第1問は150字で15点でした。
K&Tコンサルタント: 150字あるのに15点しかないのか、と思いながら解いていました。全部は書けないので、どこを落とすかを考えるしかありませんでした。
インタビュアー: 自社については、弱みも候補にしましたか。
K&Tコンサルタント: 今回は明確な弱みの記述が強くないと見て、弱みは書きませんでした。強みとして残したのは施術力とコミュニケーション能力です。競合は、その強みを発揮しにくい大型接骨院と、チェーン展開する格安マッサージ店を選びました。
インタビュアー: ジョギング診断士は、どのような配分を考えましたか。
ジョギング診断士: 顧客3、競合3、自社4くらいを意識しました。自社を少し厚くしたかったからです。自社では、スポーツ競技別に専門のトレーナーがいることと、顧客の声に耳を傾けることの2つは必ず入れようと考えました。
インタビュアー: 競合の候補は、どのように絞りましたか。
ジョギング診断士: 競合は多く、私も優先順位に迷いました。最終的には、チェーン展開している店舗を選びました。単独で運営するB社との違いを比較しやすいと考えたからです。
再現答案まで照合すると、K&Tコンサルタントは口頭で挙げた2競合に整体院も加え、自社にはZ社出身の経験まで残していました。ジョギング診断士も、最優先にしたチェーン店に加えて地域密着の接骨院を書いています。ただし本人によれば、接骨院を残したのは緻密なロジックによるものではなく、答案の枠を埋める中での直感的な現場判断でした。
第1問の再現答案
| ジョギング診断士(62点) | K&Tコンサルタント(75点) |
|---|---|
| 顧客は保険適用外でも本格的な施術を受けたい顧客、近郊の部活動生、大学運動部生、アスリート。競合は地域密着の接骨院、チェーン展開の格安マッサージ店。自社は、スポーツ競技別に専門性を有しトレーナー経験を有し高いマッサージ技術を有すると共に、顧客の声に耳を傾け顧客の不安や心の痛みを解消する傾聴力を有する。 | 顧客は肩こりなどに悩み保険適用外でも本格的な施術を受けたい顧客、近郊の中高部活生や大学の運動部の学生、コンディションを整えるアスリート。競合は保険診療をする大型の接骨院、チェーン展開している格安のマッサージ店、整体院と競争が激しい。自社は高い施術技術力と顧客コミュニケーション力を持つ。Z社出身の経験 |
第2問|同じダイナミックプライシングでも、低価格を書くかで判断が分かれた
第2問では、時間帯別の客数を踏まえた価格戦略を100字で助言します。低価格側を入れるかで判断が分かれました。
知識が一致しても、答案に残す範囲は一致しない
インタビュアー: 第2問を読んだ瞬間、何を考えましたか。
K&Tコンサルタント: 「来た」と思いました。勉強仲間と価格戦略を準備していたので、これはダイナミックプライシングしかありえない、と。そこで一度、「冷静になれよ」と自分に言いました。ダイナミックプライシングという言葉だけでは100字は埋まりません。私にとっては、価格が低い時間と高い時間の両方を書くところまで、最初の段階で決まっていました。
インタビュアー: 最終的には、どの要素を残しましたか。
K&Tコンサルタント: 低価格帯と高価格帯の両方です。低価格側を最後に残すか迷ったのではありません。ダイナミックプライシングなら低い時間と高い時間の両方が必要だと、初めから考えていました。そこで、ターゲットを分け、利用の平準化を効果として入れました。
インタビュアー: ジョギング診断士も、ダイナミックプライシングを想定しましたか。
ジョギング診断士: はい。本来なら低価格と高価格の両方を書くものだとは分かっていました。ただ、私は低価格側を入れず、18時以降を高くする方だけを書きました。
インタビュアー: なぜ低価格側を外したのでしょう。
ジョギング診断士: 中小企業が単純に値下げすることへの警戒が強く残っていました。そこで、部活生には18時前の来店を促し、高価格帯でも来店できる顧客が18時以降に予約を取りやすくなる、という組み立てにしました。
違いは知識ではなく、「値下げを避ける」という一般論を今回の条件にどこまで当てはめるかでした。公式の出題趣旨は顧客の分散化を挙げていますが、これだけで個別答案の得失点は判断できません。
第2問の再現答案
| ジョギング診断士(62点) | K&Tコンサルタント(75点) |
|---|---|
| 時間帯毎に顧客層をすみ分けるため、ダイナミックプライシングを導入。18時以降の価格をあげることで、中高部活生や大学運動部生を18時以前の来店を促し、本格的な施術を受けたい顧客層の予約を取りやすくする。 | 対応は買い物や仕事の途中、帰り道の利用など時間の変更がきく顧客に、空いている午前から夕方の時間は低価格に、混雑している時間は高価格にし利用の平準化を狙う。ダイナミックプライシングを採用する。 |
第3問|「施術コースのみ」を、探す情報の範囲を変える手掛かりにした
第3問は、顧客情報として何を新たに蓄積し、どう活用するかを150字で問いました。
「のみ」から、現在登録されていない情報を探す
インタビュアー: 第3問では、設問文のどこに注目しましたか。
ジョギング診断士: 「氏名、年齢、連絡先、受けた施術コースのみ」と書いてある「のみ」です。わざわざ「のみ」と書いているなら、それ以外の情報を探す問題だと考えました。「のみ」「だけ」「必ず」「も」といった言葉は、意図的に置かれた条件として見ていました。
インタビュアー: どのような情報を候補にしましたか。
ジョギング診断士: 競技内容、大会、目標、心の不安や痛みです。それを顧客情報としてデータベースへ登録し、予約時には競技経験のある担当者を割り当てる。さらに、話を聞いて不安を和らげ、リピーターを増やすという流れを考えました。
インタビュアー: K&Tコンサルタントは、設問分析の時点で何を置きましたか。
K&Tコンサルタント: 「顧客に寄り添う」「長期的な関係性」「B社の強み」という条件を一つずつ拾いました。情報を蓄積するだけではなく、施術力とコミュニケーション能力を使って個別提案につなげるところまで必要だと考えました。
インタビュアー: 150字を埋める材料は足りましたか。
K&Tコンサルタント: 与件文が短いのに150字だったので、材料を探し切れるかが怖かったです。ただ、条件を分解すると、情報、蓄積、活用、強み、長期関係と候補が見つかり、かなり詰め込めました。
第3問の再現答案
| ジョギング診断士(62点) | K&Tコンサルタント(75点) |
|---|---|
| 顧客に寄り添った対応を行うため、顧客のコンディション、施術内容だけでなく競技内容や大会等の目標と傾聴した不安や心の痛みを顧客情報としてDBに登録。予約時に、競技経験者をアサインするとともに、傾聴により心の痛みを和らげると共に施術時に競技や目標に合わせた施術提案を行い、リピーターを増やす。 | 肩こりなどに悩んでいる保険外でも本格的な施術を受けたい顧客に、高い施術力と顧客の声に耳を傾けるコミュニケーションを活かし、個別の症状を収集し蓄積、施術を行う。Z社出身の強みも活かし、個別の症状に合わせたテーピングやストレッチ方法をIMで個別提案、来店促進を伺い、愛顧向上とリピートを狙う。 |
※K&Tコンサルタントは「来店促進を伺い」の細部を記憶していないと回答しています。別の語へ置き換えず、提供された再現答案の表記を残しています。
第4問|「自分なら見たい」を捨て、使い残した与件を回収する
第4問は、中高生を呼び込む動画内容を100字で助言する問題です。
主観的なアイデアより、「まだ使っていない材料」を探す
インタビュアー: 動画の内容は、どのように考えましたか。
K&Tコンサルタント: 設問文にターゲットは書かれているので、動画の「何を・どのように」を複数探しました。特に見たのが協力者です。有名トップアスリートと近郊の大学運動部は、他の設問でまだ使っていませんでした。
インタビュアー: 100字には、いくつの動画を入れましたか。
K&Tコンサルタント: 2つです。有名トップアスリートとB社社長の対話を軸にした動画と、専門性を持つトレーナーを訴求する動画です。前年に、一つの施策を丁寧に書きすぎた失敗があったので、今回は内容を2本出すことを優先しました。
インタビュアー: ジョギング診断士も、同じ協力者を見ましたか。
ジョギング診断士: はい。有名トップアスリートと近郊の大学運動部が、この時点まで使われていませんでした。与件文が短いので、使わない材料はないだろうと考え、2つとも動画へ入れました。
インタビュアー: 自分ならどんな動画を見たいか、という発想は使いませんでしたか。
ジョギング診断士: 一切排除しました。自分が中高生なら何を見たいかと考えると、いくらでもアイデアが浮かびます。でも、与件文に協力者がこれだけ出ているのに使わないのは不自然です。自分なら興味を持たない動画であっても、提示されたパーツをパズルのように組み上げることを優先しました。
第4問の再現答案
| ジョギング診断士(62点) | K&Tコンサルタント(75点) |
|---|---|
| 専属トレーナー契約締結先の大学の協力を得て競技毎に発生するコンディション不良の実例に対応するマッサージ、テーピング、ストレッチの施術例、及び有名アスリートの心の不安を解消するインタビュー動画を掲載。 | 内容は①有名トップアスリートと共演し、B社の高い施術力と顧客の声に耳を傾けるコミュニケーションを訴求し、B社社長の紹介②強豪運動部とコラボしスポーツ別に専門性を有しトレーナー経験があることを訴求する。 |
疑わしい要素は、設問をまたいで2回書く
インタビュアー: 第3問と第4問で、書く内容が重ならないように調整しましたか。
K&Tコンサルタント: 逆です。怪しいと思った要素は重複して書きました。「疑わしきは重ねて書く」という決め方です。第3問と第4問には、自社の強みであるコミュニケーション能力を両方に入れました。
インタビュアー: 設問ごとに、きれいに分けないのですね。
K&Tコンサルタント: 分けません。抜け漏れが一番怖いので、両方に入れておけば、少なくとも答案のどこかには残ります。
4問を通じて見えたのは、知識より候補の絞り方だった
2人は3C、ダイナミックプライシング、「のみ」、未使用の協力者といった着眼点を共有しながら、残す要素は一致しませんでした。
次に過去問を解くときは、各設問の余白を「候補」「捨てた要素」「判断に使った条件」「最終的に残した要素」の4つに分けてください。完成答案だけを比べるより、自分がどこで候補を狭めたかが見えます。
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