「一緒に頑張ろう」があったから、4年間挑戦し続けられた(第3回/全3回)
中小企業診断士に合格して、一番得たものは何ですか。
そう尋ねると、りょうすけさんは迷うことなくこう答えました。
「勉強仲間との絆ですね。」
4年間の受験生活では、努力しても結果が出ない年がありました。十分な手応えを感じながら不合格となり、もう一度一次試験から受け直さなければならない経験もしています。
それでも挑戦を続けられたのは、「また一緒に頑張ろう」と声を掛け合える仲間がいたからでした。
第1回では、一次試験を突破するまでに積み重ねた学習習慣を、第2回では、二次試験で「努力の配分」を見直した戦略を紹介しました。
最終回では、4年間の受験生活を支えた仲間との出会い、苦しい時期を乗り越えられた理由、そして資格取得後に見えた新たな目標について伺います。
このインタビューは全3回です。この記事は第3回・合格後編です。
一番の財産は、「一緒に頑張ろう」と言ってくれる仲間の存在でした
――4年間の受験生活を振り返って、一番大きかった存在は何でしたか。
「勉強会の仲間ですね。
二次試験は、一人で広大な論点を押さえようとすると、どうしても漏れが出ます。
それだけではなく、年に一回しかない試験なので、お互い人生をかけた挑戦の中で、支え合える仲間がいることが本当に大きかったと思います。」
勉強会というと、答案を添削し合ったり、知識を補い合ったりする場をイメージする人が多いかもしれません。
もちろん、それも勉強会の大切な役割です。
一人では気付けない視点を知ることができたり、自分の考えを説明することで理解が深まったりするなど、学習面で得られるものは少なくありません。
しかし、りょうすけさんが最も大きかったと振り返るのは、知識以上に「支え合える仲間」がいたことでした。
二次試験は一年に一度しか受験できません。
だからこそ、不合格になったとき、一人で気持ちを立て直すのは簡単ではありません。
そんなとき、「一緒に頑張ろう」と言ってくれる仲間がいることが、次の一年へ踏み出す大きな力になっていたのです。
一番つらかったのは、2年目の不合格でした
――受験期間で最も苦しかった時期はいつでしたか。
「一番つらかったのは、2年目に落ちたときです。
勉強会は5人でやっていたのですが、5人のうち合格できたのは3人でした。
みんなすごく仕上がっていて、全員合格できると思っていたので、それが一つ目につらかった理由です。
もう一つは、一次試験をもう一回受けないといけないことでした。」
第2回でも紹介したように、中小企業診断士二次試験は、手応えと結果が必ずしも一致する試験ではありません。
十分に準備したと思っていても、不合格になることがあります。
りょうすけさんが特につらかったのは、自分が落ちたこと以上に、
一緒に努力してきた仲間全員で合格できなかったことです。
「全員で合格する。」
そう信じていただけに、その現実を受け止めることは簡単ではありませんでした。
さらに翌年は、二次試験だけではなく、一次試験から受け直さなければなりません。
積み重ねてきた努力がゼロになるわけではありませんが、「また一年かけて挑戦する」という現実は、大きな負担だったといいます。
ここで受験を終えるという選択肢もあったはずです。
それでもりょうすけさんは、もう一年挑戦する道を選びました。
「絶対受かるまでやろう」その言葉が次の一年につながった
――その状況を、どのように乗り越えたのでしょうか。
「残念ながら一緒に合格できなかった仲間と、『絶対受かるまでやろう』と励まし合いました。
また同じチームで勉強しようということになって、それが一番心の支えでした。
辻井先生は、私たちと同じくらい残念がって下さり、温かい言葉を沢山掛けて頂き、『受かるまで絶対やる』と思えました。」
受験勉強では、「どの教材を使うか」「どんな勉強法を選ぶか」が話題になることが多くあります。
もちろん、それらは合格するために大切な要素です。
一方で、4年間という長い受験生活を振り返ると、りょうすけさんを支えていたのは勉強法だけではありませんでした。
苦しい結果を一緒に受け止め、「次も頑張ろう」と声を掛けてくれる仲間。
そして、受験生を信じ続け、背中を押してくれる講師の存在。
その支えがあったからこそ、再び前を向き、新たな一年をスタートできたのです。
資格試験は個人戦と言われます。
しかし、りょうすけさんの歩みを振り返ると、人とのつながりもまた、合格まで走り続けるための大切な力だったことが伝わってきます。
合格して初めて知った、診断士としての責任
4年間の受験生活を経て中小企業診断士に合格したりょうすけさんは、その後すぐにSTCの実務従事へ参加しました。
受験勉強を終えたばかりにもかかわらず、すぐに実務の現場へ足を運んだのには理由がありました。
――合格後、STCの実務従事へ参加されたきっかけを教えてください。
「辻井先生への恩返しの一つでした。
授業で先生がおっしゃっていたことが、実際の現場ではどう実践されているのか興味がありました。
それに、勉強会で一緒だったSさんやKさんがサブ講師として参加していたこともあり、『ぜひ参加したい』と思いました。」
りょうすけさんにとって実務従事は、資格取得後に経験を積むためだけの場ではありませんでした。
お世話になった講師への恩返しであり、受験中に学んだ知識が現場でどのように生かされるのかを、自分の目で確かめる機会でもあったのです。
試験では「正解」を考え、実務では「最善」を考える
――実務従事では、どのような気付きがありましたか。
「年齢も経験も違う中小企業診断士の方々と一緒に、お客様へ提案をまとめていきました。
最後は必ず一つの提案として形にしなければいけません。
プレッシャーもありましたが、提案を形にできたことで、『中小企業診断士の仕事の難しさと本気度の高さ』実感しました。」
受験勉強では、設問に対して最も適切と思われる答案を考えます。
一方、実務では企業ごとに状況が異なり、唯一の正解はありません。
経営者のお話を聞き、現状を分析し、チームで議論を重ねながら、その企業にとって最善と思える提案を形にしていきます。
試験で学んだ知識は、そのための土台ではありますが、それだけでは十分ではありません。
相手の立場を理解すること。
チームで意見をまとめること。
そして、提案した内容に責任を持つこと。
実務従事を通して、りょうすけさんは「中小企業診断士として仕事をする」ということの重みを実感したといいます。
30代だからこそ、橋渡し役になれる診断士を目指したい
――これから、どのような中小企業診断士を目指したいですか。
「今30歳なので、中小企業診断士業界では中間管理職のような立場かなと思っています。
上の先輩方の考え方も分かるし、若い世代の感覚も分かる。
だから、両者の思いをつなぐような存在になれたらいいなと思っています。
それは中小企業診断士業界だけではなく、支援先でも同じです。
誠実に、謙虚に取り組んでいきたいです。」
「橋渡し役になりたい」という言葉は、とても印象的でした。
中小企業診断士業界には豊富な経験を持つ先輩方がいます。一方で、若い世代ならではの発想や価値観もあります。
企業でも同じように、経営者と若手社員、現場と管理職など、立場が違えば考え方も異なります。
そうした双方の思いを理解し、それぞれの考えをつなぎながら課題解決を支援していく。
りょうすけさんは、知識を教える専門家ではなく、人と人をつなぐ支援者でありたいと考えています。
それは、受験期間を通じて多くの人に支えられてきた経験があるからこそ、生まれた目標なのかもしれません。
資格よりも大きな財産
――最後に、これから受験する方へメッセージをお願いします。
「中小企業診断士の試験は本当に難しいと思います。
しかし、合格するまでの過程で出会った先生や勉強仲間とのつながりは、私にとってかけがえのないものです。
中小企業診断士に合格することで人生が変わるというよりも、合格を目指す過程でもう人生は変わり始めていると思います。
ぜひ努力を合格という形にして、自信を持って中小企業診断士として次の目標へ進んでほしいです。」
4年間の受験生活を通して、りょうすけさんは勉強法だけでなく、多くの人との出会いを得ました。
苦しいときに励まし合った勉強仲間。
背中を押してくれた辻井先生。
そして、合格後に実務従事で出会った中小企業診断士診断士の先輩方や同期。
一つひとつの出会いが積み重なり、現在のりょうすけさんを支えています。
第1回では、学習を習慣化するための工夫を紹介しました。
第2回では、自分の得点を分析し、努力の方向性を見極める戦略を紹介しました。
そして最終回で見えてきたのは、それらを支えていた「人とのつながり」の存在です。
中小企業診断士という資格は、合格した瞬間に終わるものではありません。
受験を通して人と出会い、学び続け、そして今度は自分が誰かを支える立場になっていく。
りょうすけさんが語った「合格することで人生が変わるというよりも、合格を目指す過程でもう人生は変わり始めている」という言葉は、そのことを何よりも表しているように感じました。
りょうすけさんの合格体験記・全3回
- 第1回|一次試験 ― 「勉強時間」より大切だった学習の見直し方
- 第2回|二次試験 ― 事例Ⅳへ集中して合格した理由
- 第3回|合格後 ― 4年間を支えた勉強仲間とのつながり【現在の記事】
