中小企業診断士・事例Ⅱの勉強法|合格者2人が「自分の型」を作るまで【第3回】
第1回:80分の解答プロセス | 第2回:令和7年度の再現答案 | 第3回:事例Ⅱの勉強法
「60点ではなく、まず確実に50点でいい」。令和7年度の事例Ⅱで75点を取ったK&Tコンサルタントは、合格年の学習をこう振り返ります。以前は一つの施策へ賭け、きれいな100点答案を狙っていました。しかし、できたと思った演習で20点。そこで、答案に残す要素も復習の仕方も変えました。
一方、62点のジョギング診断士は、複数の解法を追わず、一人の講師の考え方を自分で再現できるまで繰り返しました。情報を絞った人と、複数答案を比べ続けた人。方法は逆でも、2人とも演習の失敗を「次の80分で取る行動」へ変えています。全3回の最終回では、点につながる自分の型をどう育てたのか、座談会で聞きました。
登場者プロフィール
ジョギング診断士
令和7年度の事例Ⅱは62点。二次試験は2回受験。TAC池袋校で辻井先生のクラスを受講し、複数の解法へ手を広げず、教わった考え方を自分で再現できるまで繰り返した。
K&Tコンサルタント
令和7年度の事例Ⅱは75点。二次試験は5回受験。TAC池袋校で同じく辻井先生のクラスを受講。TAC、『ふぞろいな合格答案』、勉強仲間の意見を比較し、自分が使える形へ取捨選択した。
「100点を狙う」をやめたら、答案の作り方が変わった
K&Tコンサルタントは、不合格年の課題を、要素の拾い漏れ、用語の曖昧さ、一つの施策への書き過ぎに分解しました。
「60点ではなく50点」が、一本釣りをやめる合図になった
インタビュアー: 一つの施策を深く書き過ぎたとは、どのような状態でしたか。
K&Tコンサルタント: 自分が良いと思った一つの施策に賭けて、きれいな100点答案を作ろうとしていました。でも、方向が外れたら点が残りません。演習で「できた」と思ったのに20点だったこともあります。これだけ長く勉強して50点以下は嫌だ、と思いました。
インタビュアー: それで、目標を変えたのですか。
K&Tコンサルタント: 「60点ではなく、まず50点でいい」と考えるようにしました。確実に50点分の要素を残せれば、ほかの候補から結果的に10点くらい入るかもしれない。一本釣りで100点を狙わず、設問と与件から説明できる候補を重ねて書く方向へ変えました。
ジョギング診断士: 私も前年は、「何を、どのように」を複数入れる意識が十分ではありませんでした。合格した年は、100字なら最低2要素を入れるなど、数を残す方向へ変えました。
ここでいう50点は公式基準ではなく、一本釣りから離れるための本人の目安です。応用すべきなのは数字ではなく、「外れたら何も残らない答案になっていないか」という点です。
情報源は多いほどよいとは限らない――「自分が処理できるか」で選ぶ
事例Ⅱには、予備校の解法、受験生支援団体の答案、合格者のノウハウなど、多くの情報があります。2人の情報戦略は正反対でした。
一つに絞る人、複数を比べる人
インタビュアー: 学習中に、ほかの解法や模範答案も見ましたか。
ジョギング診断士: 私は辻井先生のメソッドだけに絞りました。同じTACの一般的な解答や解説も含め、ほかの方法へ手を広げませんでした。複数のメソッドを見ると、違いを自分で解釈し切れないと思ったからです。器用に組み合わせる自信がなかったので、一つを何度も再現する方を選びました。
K&Tコンサルタント: 私は逆で、『ふぞろいな合格答案』もよく見ましたし、勉強仲間の答案も参考にしました。ただ、全部を受け入れたわけではありません。TACで教わったことを軸に、「これは使える」「これは自分には合わない」と取捨選択しました。
インタビュアー: いろいろ見ても、最後は自己ベスト答案へ戻すのですね。
K&Tコンサルタント: はい。型や考え方が変われば、過去問の自分の答案も付け足したり、洗い替えしたりしました。「本番でこれを書きたい」と思える形へ更新し続けました。
情報源の数より、新しい解法で「今の型のどこを変えるか」を説明できるかが判断基準になります。
過去問は採点して終わらせず、次の行動まで書き換える
2人は過去問の完成答案だけでなく、そこへ至る判断を作り直しました。
解き直しと「自己ベスト答案」は、答えではなく判断を更新する
インタビュアー: ジョギング診断士は、授業後に同じ問題をもう一度解いていたそうですね。
ジョギング診断士: はい。辻井先生の解説を聞いて「なるほど」で終わらせず、自宅で同じ問題を解き直しました。なぜその与件を使うのか、なぜその優先順位になるのかを、自分でたどれるまで繰り返しました。
インタビュアー: 一度解き直せば、先生と同じ判断ができましたか。
ジョギング診断士: いいえ。家では分かったつもりでも、次の演習ではまたできない。その繰り返しでした。精度が急に上がった感覚はありません。ただ、「なぜこの要素の優先度が高いのか」を自分でたどることは続けました。本番では同じ問題は出ないので、答えより考え方を再現したかったんです。
インタビュアー: K&Tコンサルタントの「自己ベスト答案」は、どのようなものですか。
K&Tコンサルタント: 「次にまったく同じ問題が出たら、今の自分ならこう書く」という答案です。授業や『ふぞろいな合格答案』、勉強仲間の答案を見て考えが変われば更新しました。ただ足すのではなく、限られた字数で何を優先するか、なぜその要素を選ぶかまで考えます。
インタビュアー: 同じ問題が本番に出ないのに、更新を続ける理由は何でしょう。
K&Tコンサルタント: 聞かれ方の型を残すためです。何周したかは覚えていませんが、令和に入ってからの設問なら、ほぼ空で言えるくらい繰り返しました。「この聞かれ方なら、過去のあの問題と同じ」と思い出せる状態を作りたかったんです。
令和7年度第3問の「施術コースのみ」から、K&Tコンサルタントは過去のネイルサロン事例を思い出し、登録情報を使う個別提案へつなげました。
| 今回起きたこと | 原因の仮説 | 次回に確認できる動作 |
|---|---|---|
| 一つの施策だけを深く書いた | 最初の案を正解と決め打ちした | 書く前に答案候補を最低2つ数える |
| 設問の条件を落とした | 要求と制約を分けなかった | 「答えること」と「守る条件」を別々に印付けする |
| 与件にない案で字数を埋めた | 候補が足りないまま書き始めた | 要素が足りなければ、条件ごとに与件へ戻る |
本番で考えることを減らすため、手順を毎週更新した
第1回で見た、受験番号を記入する、段落番号を振る、設問を分析する、与件を読む、解答順を決めるという動作。K&Tコンサルタントは、本番前の約2か月、それらをWordの「マイマニュアル」へ書き出し、演習のたびに更新していました。
マニュアルは完成品ではなく、「タレを継ぎ足す」ように育てる
インタビュアー: マニュアルには、どの程度細かく書いていたのですか。
K&Tコンサルタント: 最初に受験番号を記入する、スラッシュを入れる、設問分析をする、どの順番で解く、といった手順までです。演習で失敗したら毎週更新し、次はその通りに振る舞います。完成させるというより、タレを継ぎ足すような感覚でした。
インタビュアー: マニュアルの更新にも、かなり時間を使ったのですか。
K&Tコンサルタント: 学習時間の半分くらいを使った時期もあります。頭で覚えたつもりだと忘れたり、自分に都合よく解釈したりするので、言葉にして残しました。本番直前にも事例Ⅱのマニュアルを見て、動きを確認しています。
ジョギング診断士: 私は同じ形式のWordではありませんが、解き直しを通じて辻井先生の判断手順を繰り返しました。順番が固まると、本番で迷う時間が減りました。
学習時間の半分はK&Tコンサルタントの一時期の配分であり、推奨量ではありません。持ち帰るべきなのは、「設問をよく読む」を「制約条件に黒い印を付ける」のような確認できる動作へ変えた点です。
答案外の判断も減らしました。ジョギング診断士は睡眠、食事、休憩を模試で試し、K&Tコンサルタントは羽織物、間食、ペンの配置、トイレの時間まで固定。具体策ではなく、「当日に迷う選択を模試で決める」考え方が参考になります。
直前1か月は、新しい正解より残った課題を潰す
型を使い切る人、残課題を数える人
インタビュアー: 試験1か月前の受験生に、何を優先してほしいですか。
ジョギング診断士: 新しいことへ手を広げず、自分が作ってきた型を使い切ることです。私は最後まで一つの方法を繰り返しました。
K&Tコンサルタント: 私は「できないことが、あと何個あるか」を数えました。要素の拾い漏れ、チャネルの使い分けなど、残った課題を具体的にして一つずつ潰しました。
インタビュアー: 特に残っていた課題は何でしたか。
K&Tコンサルタント: 抜け漏れとチャネル戦略です。「顧客とB社を何でつなぐか」を答案へ落とすところが曖昧でした。課題を増やすのではなく、この2点を重点的に確認しました。
60点を取るコツは、一問に賭けず4問へ点を残すこと
インタビュアー: 事例Ⅱで60点以上を取るために、一番大切なことを一つ挙げるとしたら何でしょうか。
ジョギング診断士: どこか一問だけに注力するのではなく、4問を最後までやり切ることです。その中で、各問に複数の要素を入れ、全体でバランスよく点を取ることを意識しました。
K&Tコンサルタント: 私は「まず50点を確実に取る」と、思考レベルまで落とし込むことです。100点を狙うと言いながら、実際には一つの案に賭けてしまうことがありました。設問と与件から説明できる要素を重ね、外れても点が残る答案に変えました。
ジョギング診断士は4問を完答して点を分散させ、K&Tコンサルタントは「確実な50点分」を積み上げました。表現は違っても、一つの正解を当てにいくより、各問に根拠のある要素を残す点で重なります。
受験生へ――この試験で身に付けた型は、合格後にもつながる
インタビュアー: 最後に、これから二次試験を受ける方へメッセージをお願いします。
K&Tコンサルタント: 診断士になってから、よくできた試験だと感じます。事例問題で使う考え方は、補助金の申請書を書くときなど、診断士として活動する場面にもつながっています。試験に受かるためだけではなく、その先で使う型を身に付けていると考えると、少しモチベーションも上がるのではないでしょうか。
ジョギング診断士: 私も、二次試験は実用的な試験だと思います。ここで学んだことは、合否にかかわらず普段の仕事にも役立ちます。最後まで諦めずに努力を続けることが、合格へ近づく一歩になると思います。
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