中小企業診断士の試験勉強は、単に机の上でテキストと向き合うだけの時間ではありません。それは、予期せぬ人生の転機や生活環境の変化、そして限られた時間の中で何を優先すべきかという「自分自身との戦い」でもあります。

仕事での責任が重なり、家庭環境も変わる中で、受験生はどのようにして学習時間を捻出し、モチベーションを維持し続けるのでしょうか。

父親の他界、実家への転居、転職、そして新組織の立ち上げという激動の2年間を淡々と走り抜け、合格を掴み取ったジョギング診断士会会員さんの実像に迫ります。自らの生活時間を削り、現実的な割り切りの中で戦い続けた道のりの先に、見えてきた景色を描きます。

Contents
  1. 受験期間中に重なった身内の不幸、転居、外での転職活動
  2. 「家族、仕事、勉強」の優先順位の設定と時間管理の現実的な割り切り
  3. ハガキで知った合格の瞬間と、AI知識を活かした今後の診断士活動の展望

受験期間中に重なった身内の不幸、転居、外での転職活動

受講開始直後に起きたご不幸には、どう対応されましたか。

2024年の1月からTACを受講しようということで進んでいたんですね。そこで「しっかり勉強していこう」と思ったのですが、2024年の1月に父が他界しまして。

勉強をやろうと思った途端に、父の葬儀を、長男だったこともあり全部やらなければいけない、遺品整理をしなければいけない、相続の手続きをしなければいけない。

具体的にはどんな状況でしたか。

試験勉強もしながらそれらを進めなければならず、ゴールデンウィークあたりまでそんなことをやりながらだったんですね。そのため、予備校1年目はそれらをやりながら試験勉強をしたというところが、まあ大変と言えば大変でした。

ジョギング診断士会会員さんは当時、予備校に通い始めた直後に父親の他界に直面し、長男としての親族対応や相続手続き、遺品整理を春先まで学習と並行して進めることとなった。

私生活の環境が変わる中、どう継続されましたか。

実家に転居しようかということになりました。実家は埼玉県富士見市なのですが、当時は練馬に住んでいたんです。そうすると、勤務先が川崎だったのですが、川崎に通えないなということになって、そこで転職もしました。

それはいつ頃のことでしたか。

実は試験勉強と、父の遺品整理や相続をしながら、転職活動をしながらという状況でした。予備校1年目はそれでうまくいかなかったんですね。

実家への引っ越しを機に、それまでの通勤経路を考慮して転職活動も同時に開始し、生活環境のすべてが一新される中での1回目の二次試験に臨んでいた。

「家族、仕事、勉強」の優先順位の設定と時間管理の現実的な割り切り

すぐに引っ越しをされたのですか。

引っ越しはすぐにはできなかったので、予備校2年目の2025年の春に引っ越しました。家族は今までの東京から埼玉に引っ越すとなると、結構気を遣わなければならなかったことが、結構大変でした。

周囲の理解を得るために、何か工夫した点はありましたか。

やっぱり「家族が大事だ」というのは私なりにはありました。引っ越しした後に家族をサポートと言いますか、ケアしながらやらないと家族全体が瓦解してしまうというのがあったので、私なりには「勉強よりは家族を優先する」ということはかなり決めていました。

なので、おそらく勉強時間は多少足りないということはありつつも、そこはもう次の年でも頑張ると。諦めずに頑張る。その時はやはり、翌年頑張るにしても「やりきることはやろう」というふうに思いました。

具体的にはどんな調整をされたのですか。

家族との夏休みの旅行もあるのですが、そこは「ごめん、11月に韓国旅行に行くから、韓国に家族全員連れていくから、もう夏は旅行はなし」ということにして割り切ってもらって、その部分に関しては家族のケアは優先しつつ、夏休みの期間などは勉強に当てさせてもらったという風に、自分なりに時間をうまくコントロールしながら、なんとか時間を確保できたとは思っています。

東京から埼玉への転居に伴う家族への配慮を最優先とし、夏休みのイベントを秋にスライドさせることで、家族のケアと自身のまとまった学習時間の両立を図った。

組織の立ち上げが重なった際、どう時間を切り分けましたか。

マネージャーとしてした転職した翌年の2025年7月頃、「部門を独立させる」という話が出ました。

昇進もちらつかされながら、「10月に新たな組織を立ち上げてそこの責任者にさせるから、仕事をここで頑張れ」ということも言われて、「あ、試験の時にこんなことまで言われて、大変だな」ということもありました。

仕事の責任が増す中、勉強時間はどう確保されたのですか。

試験よりは、ちょっと正直に言うと、仕事と家族にかなり時間を振り分けて、その残りの時間は自分の生活を削って、あとは全て勉強という形にしました。自分の時間を確保するというよりも、「家族、仕事、勉強」という具合に時間を割り切ったのが私のやり方だと思ってます。

この発言からは、仕事や家庭の重責を綺麗事として片付けるのではなく、自身の睡眠や趣味といった「個人の時間」を限界まで削ることで、現実的な時間配分を淡々と実行する、ジョギング診断士会会員さんならではの堅実な姿勢が伺える印象を受ける。

ハガキで知った合格の瞬間と、AI知識を活かした今後の診断士活動の展望

合格発表の当日、どのような状況で結果を確認されましたか。

おそらく合格はしていないという確信があったので、実は合格発表を見なかったんですね。まず初日は見なくて。で、周りの勉強仲間からは、試験結果がLINEで上がっていたので、「ああ、そうか、この時期にちょうど発表があったんだ」と思って、自分もじゃあ重い腰を上げてサイトを確認したら、「口述試験を受ける資格が届きました」と書かれていました。

その時はどのように対応されたのですか。

受かるつもりがなかったので「ハガキが届くくらいまでもっと様子見よう」と思って。ハガキが届いたその時に初めて、「あ、これは通ったんだ」と知りました。ただ、口述試験もあったので、あまり大騒ぎせずに、家族にもあまり伝えないで過ごしたと思います。

周囲の反応や、受け止め方はどのようなものでしたか。

口述試験が受かった時に家族に伝えたんですけど、家族も診断士試験の難しさなんて知らないので、あまり大きなリアクションもないですし、「大変だったね」ということも一切言われず(笑)。その代わり、その日だけは一人でお酒を飲みました。

自身の感覚としては不合格を確信していたため、初日はWeb発表を見送っていた。ハガキの到着によって初めて合格を事実として受け止め、口述試験の通過後も家族からの大きな反応は特になかったため、静かに一人で晩酌をして合格の瞬間を過ごした。

実務従事での気づきを経て、強みを今後どう活かしたいですか。

合格前から、辻井先生の実務従事を申し込みました。合格しなかった時には返金があるよというお話だったので。

年度末の本当に仕事が忙しい中、かつ2月、3月の実務従事は土日に実施でしたので結構大変でしたが、それをもって5月に診断士登録ができ、埼玉県の診断士協会に所属することにしました。

具体的にはどんな状況でしたか。

実務従事で得た気づきということでいきますと、今回の実務従事はSTCで受けたのですが、AIもうまく活用するという進め方でした。

私は本業でもAIを活用しているというところで、元々私自身が「AIを活用しながら、こういったコンサルティングの領域というのは、かなりAIに置き換わっていくんだ」という考えを持っていました。そういったところを少し体現することができたというか、元々の想定に対して、この実務従事を通して自分がやっていて考えていたことが、そこそこ外れていなかったんだなということを理解できました。この経験は非常に大きかったと思ってます。

合格発表前の段階で実務従事を予約し、登録後は本業のAIの専門性を活かしながら、実際のコンサルティング現場におけるテクノロジー活用の有効性を検証した。

実務従事の中で、他にどのような気づきがありましたか。

AIの使い方には自分なりの工夫がありましたが、一方で、AIの出力をうのみにせず、ファクトチェックを丁寧に行うことの大切さを、実務従事を通じて改めて実感しました。便利なツールだからこそ、最後は自分で裏取りをする——その姿勢の重要性を、経験値として積むことができたと感じています。

その強みを今後どう活かしていくのですか。

私自身が元々NTTグループで技術職であり、またそれを踏えて技術士の資格を持っているので、その強みを活かした形で、あとAIの理解などの強みを活かす形で、埼玉県の診断士協会を通して埼玉県の中小企業をサポートしていきたいと思っています。

人によりAIの活用度合いが違うことを理解することやファクトチェックの重要性について再認識し、技術士とAIの専門性のバックグラウンドを融合させ、地域の中小企業支援へ還元する道筋を描いている。

今後、どのような中小企業診断士を目指していきたいですか。

特に、私が今できているかどうかは別として、この診断士活動と勉強を通しながら、「結局AIが進展すると、かなりの部分はAIで置き換わる」とは思っているんですね。

ただ、その中でやはり人間が残るところというのは、パッションであったり信頼だと思います。お客さんとの信頼を持って、中小企業の価値向上をサポート、もしくは自分自身もリードできるような立ち位置で貢献していけるような人材にはなっていきたいと思っています。


最後に、受験生に向けて一言メッセージをいただけますか。

中小企業診断士の受験生へ向けて、やはりあの試験は乗り越えるだけの価値はあると思っています。

大変な試験ではあるのですが、乗り越えた後の達成感、またそこから先にすぐ中小企業診断士としての活動というのは、未来が非常に広い、幅広い道というのが出てくると思っています。

私自身も取り組み始めているところではあるのですが、そういったことを目指せる場であるので、ぜひ頑張っていただきたいと思っています。

ABOUT ME
SHINJI
製薬業界に20年以上従事。大手内資・外資系製薬企業にて、MR、プロダクトマーケティング、KAM(キーアカウントマネジメント)と医療用医薬品のコマーシャルの中核領域を一貫して経験。激変する事業環境の中で、自らのキャリアを再定義し「自立したビジネスパーソンとして新たな道を切り拓く」べく中小企業診断士試験に合格。現在は企業内診断士として、現場力と経営理論を融合させた実践を重ねている。