今回話を聞いたのは、令和7年度の事例Ⅱで62点を取ったジョギング診断士と、75点を取ったK&Tコンサルタントです。2人はともにTAC池袋校で辻井先生のクラスを受講し、同じメソッドを学びました。それでも本番の動きは、シャーペン1色と3色マーカーを使う方法、答案を書き始めるまで35分と40~45分など、意外なほど違います。

第1回では、問題用紙を開いた瞬間から答案を書き終えるまで、2人が何を見て、何を判断し、なぜその動作を選んだのかを追います。目的は合格者の手順をそのまま覚えることではありません。自分の得意・不得意に合わせ、80分の一つひとつの動作に理由を持たせるための座談会です。

登場者プロフィール

ジョギング診断士

令和7年度事例Ⅱ62点。二次試験2回受験。TAC池袋校の辻井先生のクラスで学び、教わったメソッドを基本にしながら、自分が80分で処理できる形へ調整した。

K&Tコンサルタント

令和7年度事例Ⅱ75点。二次試験5回受験。ジョギング診断士と同じくTAC池袋校で辻井先生の指導を受け、当日に考えることを減らすため、細かな手順まで自分の型に落とし込んだ。

80分は、問題用紙を開いた直後の数分から始まっている

まず、問題用紙を開いた直後の動きから聞きました。

最初に何を見て、何を判断していたのか

インタビュアー: 試験が始まり、事例Ⅱの問題用紙を開きました。最初に何をしますか。

ジョギング診断士: 最初に与件文の段落を分け、段落数と文章量が多いか少ないかを設問の上にメモしました。その後に設問分析へ入ります。

インタビュアー: 文章量を見るのは、何を判断するためですか。

ジョギング診断士: 私は与件文が長いと得点が変わりやすい傾向がありました。そこで、その事例の難易度と、設問分析にどれだけ時間をかけられるかの目安にしていました。令和7年度は文章量が少ないと判断したので、設問を少し丁寧に読んでも大丈夫だろうと考えました。

インタビュアー: K&Tコンサルタントはどうしていましたか。

K&Tコンサルタント: 受験番号を記入し、段落番号を振り、最初と最後の段落を見て課題を確認する。その後に設問分析をして、3分くらいで全体を一度通読するところまで、かなり細かく決めていました。繰り返し出ている言葉がないかも、この段階で見ていました。

インタビュアー: 受験番号の記入からですか。かなり細かいですね。

K&Tコンサルタント: 今あらためて口に出すと、自分でも少し気持ち悪いくらいです。でも、本番で「次は何をしよう」と考え始めると、その分だけ答案について考える時間が減ります。だから動作を機械的にしました。

インタビュアー: そこまで順番を固定した理由は何でしょう。

K&Tコンサルタント: 辻井先生から教わって特に役立ったのが、「当日に考えることをどれだけ減らせるか」という考え方です。過去問もTACの演習も同じ型で解き、その延長に本番がある状態を目指しました。

方法は違っても、2人とも読み始める前の迷いを減らしていました。

前工程に35分か45分か――時間配分は「書く速さ」から逆算する

2人は、同じ時間配分を使わず、自分の読む速さと書く速さから逆算していました。

何分までに読み終え、なぜそこで書き始めるのか

インタビュアー: 80分の時間配分は、事前にどこまで決めていましたか。

ジョギング診断士: 設問分析までを15分、与件文を読んでチェックするところまでを35分という目安にしていました。35分は辻井先生のメソッドでも一つの目安だったと思います。そこから先は答案を書く時間で、各設問に何分というところまでは細かく決めていませんでした。

K&Tコンサルタント: 前工程35分が理想だとは聞いていましたが、私は読み取りの漏れが課題でした。反対に書くのは速く、残り35分あれば白紙からでも書けると考えていました。そこで、与件文の精読に12~15分ほど使い、設問との対応付けを始めるのが全体で30分前後。前工程は40分までに終えるつもりで、実際には45分くらいまで使うこともありました。

インタビュアー: 書く時間を短くしてでも、読み取りに時間を使ったのですね。

K&Tコンサルタント: そうです。学生の頃から国語を教え、書きながら説明することには慣れていました。書くことより、拾い漏れを防ぐ方に時間を使う設計でした。

インタビュアー: 見直しの時間は確保していましたか。

K&Tコンサルタント: 理想は5分ですが、大抵は余らず、受験番号や明らかな誤字を見る程度でした。

ジョギング診断士: 私も余れば見直します。ただ、後ろの文字を全部ずらす修正はせず、文字数を変えずに直せる場合に限りました。

インタビュアー: 前工程が予定時刻を超えそうな場合は、どうしていましたか。

ジョギング診断士: 35分になったら、設問と与件の対応付けが途中でも、いったん打ち切って答案用紙へ移りました。不足している部分は、答案を書きながら必要な都度、与件文へ戻って補いました。

K&Tコンサルタント: 私は、45分で何かを打ち切るルールは設けていませんでした。その段階なら与件文は読み終わっているので、遅れた分だけ答案候補を検討する時間が短くなるイメージです。実際の本番では、そこまで遅れることはありませんでした。40~45分という幅は、「それくらい時間をかけてもよいから、設問と与件をじっくり見よう」と自分に余裕を持たせる意味もありました。

35分と40~45分の差は、K&Tコンサルタントが「読む方が弱く、書く方が速い」と把握し、読み取りに十分な時間を使ってよいと決めていたためです。一方、ジョギング診断士の35分は、遅れても答案記入へ移る切り替え時刻でした。同じ数字でも「目標」「上限」「余裕を持たせる幅」では役割が違います。

設問分析は、答えを決める作業ではなく与件を探す準備だった

2人が学んだ辻井先生のメソッドでは、設問文に「白フラグ」と「黒フラグ」を付けます。白フラグは何を答えるか、黒フラグは答案で守る条件や制約を示す目印です。講師独自の方法ですが、2人にとっては設問要求の取り違えを防ぐ共通言語になっていました。

「答えること」と「守る条件」を先に分ける

インタビュアー: 設問文では、最初に何を確認しますか。

ジョギング診断士: 設問をスラッシュで区切り、白フラグと黒フラグを付けました。例えば令和7年度なら、「どのように対応すべきか」が答える内容なので白フラグ、「ターゲット層を意識した」などが守る条件なので黒フラグです。その後、解答方針と解く順番をメモしました。

K&Tコンサルタント: 私も同じです。さらに、3C分析なら「顧客は」「競合は」「自社は」、第2問なら「対応は」と、答案の書き出しまで設問の横に書きました。後で答案を書き始めるときに、何を答えるのかを忘れないためです。

インタビュアー: 設問を見た段階で、使う知識も想定しますか。

K&Tコンサルタント: 令和7年度なら、第1問は3C分析、第2問は価格戦略、第3問は長期的関係性からLTV、第4問は動画コンテンツという想定を置きました。それを見ながら、与件文に材料を探しに行きます。

ジョギング診断士: 私もそこはほぼ同じです。

フレームワークは答えではなく、与件文で材料を探すための仮説として使われていました。

マーカーの色数に正解はない。対応付けが崩れない方法を選ぶ

筆記具では、3色のマーカーとシャーペン1色に分かれました。

3色を使う人と、色分けを諦めた人

インタビュアー: マーカーやペンは、どのように使い分けていましたか。

K&Tコンサルタント: 第1問の3C分析でマーカーを使うと与件文の大半が色だらけになるので、第1問には使いませんでした。第2~4問には、それぞれ3色のマーカーを割り当て、設問の注意点と、与件文でその設問に使う部分を同じ色で結び付けました。それとは別に4色のフリクションボールペンを使い、強みは赤、弱みや課題は青、環境変化は緑で印を付けました。

インタビュアー: ジョギング診断士はマーカーを使わなかったそうですね。

ジョギング診断士: はい。最初は辻井先生のメソッドを忠実に使おうと色分けも試しました。でも、私がやると時間内に間に合わないと分かり、途中で諦めました。本番はシャーペン1色です。

K&Tコンサルタント: 分からなくなりませんでしたか。

ジョギング診断士: 正直、分からなくなるところはありました。ただ、B社、人物、場所などに記号を付け、繰り返し語をつないでいました。全部をそのままやり切るのは自分には難しく、色まで使うと手が回らない。そこで少し手を抜き、段落単位で「第1問」などと対応付ける、粗い方法にしました。

ジョギング診断士: TACの演習を重ね、自分が使いこなせない動作はいくつか諦めました。方法を減らした代わりに、記号と繰り返し語は残しました。

目的は同じです。設問と与件を対応付けられる範囲で、80分以内に再現できる道具を選んでいました。

与件文は一度で読み切らず、読むたびに仕事を変える

2人とも与件文と設問を3回程度行き来し、読む目的を変えていました。

3回読むなら、各周回で何を終えるのか

インタビュアー: 与件文は、実際にどのように読んでいましたか。

ジョギング診断士: 1回目は大枠をつかむために通して読みます。2回目は数字、人物、場所、顧客ニーズなどに記号を付けます。3回目は繰り返し出てくる言葉をつなぎ、それを設問と対応付けました。大体3回です。

K&Tコンサルタント: 私は最初に3分ほどで概要を見ます。設問分析の後、15分くらいかけてしっかり読みます。4色のフリクションボールペンで強み、弱み・課題、環境変化などを分け、その後、第2問ならこの色というように、設問ごとのマーカーで対応付けました。こちらも3往復くらいです。

インタビュアー: 与件にないアイデアが浮かんだ場合はどうしますか。

ジョギング診断士: 自分のアイデアはほぼ書きませんでした。与件文にそのまま書かれていなくても、複数の言葉をつなげるとこれしかない、と考えられるものを答案候補にしました。

K&Tコンサルタント: 私も、与件文の表現は基本的にそのまま使う派でした。

3回という回数だけでなく、1回目に大枠、2回目にチェック、3回目に設問との対応付けまで終えるという役割が決まっていました。

解答順と要素数まで決めて、書く段階の迷いを減らす

令和7年度の解答順は、ジョギング診断士が第2問→第3問→第4問→第1問、K&Tコンサルタントが第3問→第4問→第2問→第1問でした。第1問を最後にした点は同じですが、その理由は完全には一致しません。

第1問を最後にしたのは、難しいからだけではない

インタビュアー: 令和7年度は、どの順番で答案を書きましたか。

K&Tコンサルタント: 第3問、第4問、第2問、第1問です。第2問の価格戦略は事前にかなり準備していて、確実に書けると思ったので後に回しました。第1問はいつも最後にすると決めていました。

インタビュアー: なぜ第1問を最後に固定したのでしょう。

K&Tコンサルタント: 後の設問を解くと、競合に対してどの自社資源が差別化につながるかが見えてきます。令和7年度なら、コミュニケーション能力や専門知識です。それを確認してから3C分析の自社を書く方が判断しやすいと考えていました。

ジョギング診断士: 私は第2問、第3問、第4問、第1問でした。第2~4問の施策や戦略を先に固め、その内容と矛盾しないように、第1問で書く顧客・競合・自社の要素を選びました。後半の答案と整合性を持たせて3C分析を仕上げるため、第1問を最後に回しました。私の場合、第1問を最後にするかはケース・バイ・ケースです。

インタビュアー: 配点は、解答順を決める材料にしましたか。

ジョギング診断士: 配点はあえて意識しませんでした。配点を見ると、そちらに解答順を引っ張られる傾向が自分にはあったからです。何点かより、この事例をどの順番で処理すればよいかを優先しました。

K&Tコンサルタント: 私は設問を見たときに、ちらっと確認する程度です。令和7年度は、第1問が150字なのに15点しかないことには気付きました。ただ、配点が低いから捨てるのではなく、候補が多い中で何を削るかに悩みました。

100字に何個の要素を残すか

インタビュアー: 100字なら、いくつの要素を入れると決めていましたか。

ジョギング診断士: 少なくとも2要素です。文章を短くし、体言止めも使いながら、パーツを複数入れました。基本は答案用紙の枠をしっかり埋めます。ただ、残り文字数を埋めるために時間がかかる場合は、90字前後まで書けていれば、それ以上の字数埋めに固執しないという安全策を持っていました。

K&Tコンサルタント: 100字なら3要素、150字なら最低4要素を意識しました。書く前に要素が足りないと分かれば、与件文へ戻って探します。一度書いた後、5~7字程度で入る要素を最後に足すこともありました。

インタビュアー: 余った数文字でも、空けたままにしなかったのですか。

K&Tコンサルタント: 入れる根拠があるなら、短い要素を追加しました。きれいな一文を守るより、採点候補になり得る材料を一つでも残す考えです。ただし、与件にない言葉で埋めることはしません。

インタビュアー: 2人に共通する答案の枠はありますか。

ジョギング診断士: 「誰に、何を、どのように、効果」という、いわゆる「ダナドコ」です。ただ、設問文にターゲットや効果がすでに書かれている場合は、「何を・どのように」を厚くすることを意識しました。

下書きは作らず、材料メモから答案用紙へ進む

インタビュアー: 要素を選んだ後、答案の下書きは作りましたか。

K&Tコンサルタント: 完成文の下書きは作りませんでした。設問分析の時点で「対応は」「顧客は」といった書き出しだけを決め、集めた材料から答案用紙へ書いていきました。

ジョギング診断士: 私も同じです。設問の横に、ターゲットや価格戦略などの材料はメモしますが、文章を一度作ってから清書することはしませんでした。材料をつなぎ合わせながら、そのまま答案用紙へ書きました。

インタビュアー: 字数が超えそうなときは、どう調整しましたか。

ジョギング診断士: 基本は与件文の表現を使いますが、短くする必要があれば、ひらがなを漢字にするなど一、二文字単位で圧縮しました。それより難しかったのは、文章を縮めることより、どの要素を優先するかです。

K&Tコンサルタント: 私は設問文と同じ言葉を答案で繰り返さないようにしました。「理由は」と書き出して字数を使うより、最後を「~のため」と結ぶ。削って空いた数文字に、与件の別の要素を入れられるからです。

下書きを省けたのは、前工程で書き出しと答案候補を用意していたからです。解答順、最低要素数、下書きの有無まで先に決め、書く段階の迷いを減らしていました。

合格者の80分をコピーせず、動作ごとの目的を持つ

1色と3色、前工程35分と40~45分、100字に最低2要素と3要素。方法は違っても、設問要求を外さず、与件の材料を見失わず、書く段階の迷いを減らす目的は共通していました。

次の演習では、①設問分析が終わった時刻、②設問と与件の対応付けが終わった時刻、③答案を書き始めた時刻を問題用紙の余白に残してみてください。遅れた工程が分かれば、色を減らすのか、読み方を分けるのか、書き出しを先に決めるのかを選べます。合格者の数字ではなく、自分が時間を失った動作から80分を組み直せます。

次回は、令和7年度の第1問から第4問までを取り上げます。同じ問題を見た2人が、どの材料を候補にし、どこで判断を分け、何を答案に残したのか。本番の意思決定を設問ごとに追います。

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第2回|令和7年度事例Ⅱの再現答案と判断プロセスを見る →

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浦 美和子
人材派遣会社で営業担当として、採用、配属後のフォロー、職場改善などに従事。2017年に中小企業診断士と国家資格キャリアコンサルタントの資格を取得。現在は独立開業し、中小企業の経営支援を行う。得意分野は、人事労務・人材育成、事業承継など。