中小企業診断士二次試験、事例Ⅳへ集中して合格した理由(第2回/全3回)
中小企業診断士二次試験は、「頑張った分だけ結果が出る」とは言い切れない試験です。
十分な手応えがあったにもかかわらず不合格となり、「何を変えればいいのか分からないまま、翌年を迎えた」という受験生も少なくありません。
2025年度に合格したりょうすけさんも、二次試験には4回挑戦しました。毎年勉強方法を見直しながらも思うような結果は得られず、「努力の量」だけでは越えられない壁に直面します。
転機となったのは、自身の得点推移と合格者の傾向を冷静に分析したことでした。
「どれだけ勉強するか」ではなく、「どこへ時間を使うべきか」。
その視点を持てたことが、合格への大きな一歩になりました。
このインタビューは全3回です。この記事は第2回・二次試験編です。
「知っている」と「書ける」は、まったく違いました
――二次試験では、どのような点に苦労しましたか。
「一番苦手だったのは事例Ⅳです。
4回受験しましたが、事例Ⅰは1・2回目がダメで、3・4回目は60点を超えました。事例Ⅱは50点台で横ばいが続き、4年目は60点を超えました。事例Ⅲは年によってばらつきがあり60点を超えた年もありましたが、4年目は40点台でした、、、笑
一方で事例Ⅳは低い点数が続いていましたが、最後に70点を超えることができました。」
こうして点数を並べると、「最後の年に事例Ⅳが大きく伸びた」という結果が目を引きます。
――結果を振り返って、課題は何だったと思いますか。
「合格できなかった3回を振り返ると、問題を解く量が足りませんでした。
知識を整理したり、論点をまとめたりすることに多くの時間を使っていて、問題を解くアウトプットの量が十分ではなかったと思います。」
一次試験では、知識を積み重ねることが得点につながります。
一方、二次試験では、出題形式が変化する中で「出題の趣旨にあった解答を表現する力」が求められます。
知っているだけでは点数にならない。
その違いを、3年間の受験を通して痛感したといいます。
「知識がある」ことと、「求められている解答を正しく表現する」ことは別物でした。
この気付きが、その後の学習方法を見直すきっかけになります。
合格に必要な勉強法とは何かを考えた
――4年目は勉強方法を大きく変えたそうですね。
「3年間自分なりにベストを尽くしましたが、結果は出ませんでした。
だから4年目はガラッと変えました。インプットや論点整理はほとんどやめて、問題集や予備校の模試、過去問などのアウトプット中心にしました。
アウトプットは疲れるので結果的に勉強時間は短くなりましたが、その分、集中して取り組みました。」
「勉強時間が短くなった」という言葉だけを聞くと、逆効果に感じるかもしれません。
しかし、3年間の勉強時間を振り返り、合格に必要な勉強は何かを考えて行った、
インプット中心の学習から、アウトプット中心の学習へ。
知識を増やすことから、本番で使える力を身に付けることへ。
りょうすけさんは、「何をやるか」以上に、「何をやらないか」を意識するようになったといいます。
その判断が、最終年の学習戦略を大きく変えていきました。
「全部を伸ばす」は、最適な戦略ではないと考えた
――戦略を変える決断は、どのようにして生まれたのですか。
「事例ⅠからⅢは、ある程度やっても大きく点数が変わらないと思うようになりました。
それなら、努力が得点につながりやすい事例Ⅳに集中しようと思いました。
3年目に合格した方々の合格報告を目にした際、事例Ⅰ~Ⅲは50点台でも、事例Ⅳだけ80点や90点を取って合格されている方が多く、『試験の傾向が変わってきているな』と感じたことも大きかったです。」
ここでりょうすけさんが行ったのは、自身の
得点推移を分析し、さらに合格した方々の得点傾向も観察したうえで、「どこへ時間を投資すれば合格に最も近づけるのか」を冷静に考えたのです。
事例ⅠからⅢを均等に伸ばそうとするのではなく、努力が結果に結び付きやすい事例Ⅳへ時間を集中する。
その発想は、まさに中小企業診断士らしい戦略的な意思決定だったと言えるでしょう。
「分かる」ではなく、「解ける」を積み重ねた
――事例Ⅳは、具体的にどのような勉強をされたのですか。
「4年目は、とにかくアウトプット中心でした。
様々な予備校の模試もやりましたし、簿記1級のテキストや『意思決定会計講義ノート(イケカコ)』も使いました。
過去問は10年以上、13〜14年分くらいを2〜3周しました。」
事例Ⅳは、努力した分だけ成果が表れやすいと言われる一方で、中途半端な演習では得点につながりにくい科目でもあります。
りょうすけさんは、新しい知識を次々に増やすことよりも、「本番でミスをしない状態」をつくることを重視しました。
問題を解く。
間違えた原因を確認する。
そして、間違えた原因をノートに記録し問題を解く前は確認する。
このサイクルを繰り返し、「同じミスをしない」対策を行いました。
教材も一つに限定しませんでした。
様々な予備校の模試、簿記1級の教材でさまざまな出題パターンに触れ、「イケカコ」で論述問題の論点を補強する。そして10年以上の過去問を解き直し、本試験でミスをしない解答プロセスを体に染み込ませていきました。
目的は、教材をたくさんこなすことではありません。
初めて見る問題でも落ち着いて対応できる力を養うことでした。
「すべてを伸ばす」より、「伸びるところへ集中する」
事例Ⅳは70点台まで伸びました。
一方で、事例Ⅲは40点台でした。
全ての事例でバランスよく60点台や80~90点の高得点を取ったわけではありません。
それでも、りょうすけさんは合格をつかみました。
この結果は、多くの受験生にとって意外に感じられるかもしれません。
「4事例でバランスよく60点を超えないと合格できない。」
そんなイメージを持っている人も多いでしょう。
しかしりょうすけさんは、自身の得点推移を分析した結果、「最も伸びる可能性がある科目へ時間を使う」という判断をしました。
もちろん、これは誰にでも当てはまる勉強法ではありません。
得意・不得意は人によって異なりますし、得点の伸び方も違います。
だからこそ大切なのは、「合格者がやっているから同じことをする」のではなく、「自分の場合はどこへ時間を投資することが最も効果的なのか」を考えることです。
その判断を支えたのは、感覚ではありませんでした。
自分自身の得点推移という事実と、合格者の得点傾向という客観的な情報です。
思い込みではなく、データをもとに戦略を組み立てる。
その姿勢は、企業を分析し、限られた経営資源を最適に配分する中小企業診断士の考え方にも通じています。
合格を引き寄せたのは、「勉強法」ではなく「意思決定」だった
4年間の二次試験を振り返ると、りょうすけさんが最後に重視したのは、「どの教材を使うか」ではありませんでした。
自分の得点を冷静に分析すること。
努力が成果につながる領域を見極めること。
そして、そこへ時間を集中して投資すること。
合格した年に違っていたのは、勉強量そのものではなく、努力の向け先でした。
二次試験では、「頑張った」という実感だけでは合格できません。
何を伸ばすべきかを考え、そのために何をやめるかを決める。
りょうすけさんの4年間は、その意思決定の積み重ねだったと言えるでしょう。
次回予告
4年間の受験生活を通して、りょうすけさんが最後に「一番の財産だった」と語ったのは、勉強法でも合格ノウハウでもありませんでした。
連載最終回では、「一緒に頑張ろう」と励まし合った仲間との出会い、苦しい時期を支えてくれた講師の言葉、そして合格後に見えた中小企業診断士としての新たな目標について伺います。
次の記事
第3回・合格後編 4年間を支えた勉強仲間とのつながり →りょうすけさんの合格体験記・全3回
- 第1回|一次試験 ― 「勉強時間」より大切だった学習の見直し方
- 第2回|二次試験 ― 事例Ⅳへ集中して合格した理由【現在の記事】
- 第3回|合格後 ― 4年間を支えた勉強仲間とのつながり
