中小企業診断士試験に合格するまで、高田さんは5年かかった。

一次試験は一度で終わったわけではない。1年目は4科目合格。2年目は科目合格による免除を使い、残った3科目を受験して総得点で一次試験を突破したが、その後の二次試験で合格には届かなかった。4年目には再び一次試験から受け直し、5年目も残った3科目を受験して一次試験を突破し、二次試験合格につなげた。

暗記が苦手な人にとって、一次試験は知識量だけの勝負ではない。苦手科目をどう受け止め、どの教材を使い、模試や過去問との距離感をどう取るのか。高田さんの一次試験は、その試行錯誤の連続だった。

プロフィール

  • 氏名:高田 貴博(たかた たかひろ)
  • 合格年度:2025年度(令和7年度)
  • 合格までの年数:5年
  • 主な勉強方法:スタディング/TAC/LEC
  • 属性キーワード:社会人・会計事務所勤務・独立診断士・多年度受験・暗記科目が苦手

診断士を知ったきっかけは、資格手当だった

—— 中小企業診断士を知ったきっかけは何でしたか。

「会計事務所で働いていた時に、資格手当の対象に中小企業診断士があって。そこで初めて知りました。」

—— なぜ勉強を始めたのですか。

「コロナの時期に外出できなくなって、趣味のトレイルランニングもなかなかできなくなりました。
何かスキルアップになる資格を取ろうと思い立ち、診断士の勉強を始めました。」

資格手当で存在を知り、コロナ禍で時間の使い方が変わったことが、勉強を始める入口になった。勉強を進める中で、会計事務所で接していた経営者への憧れも重なり、独立して自分で事業を立ち上げたいという思いにつながっていった。

1年目は4科目、2年目は残った3科目で突破

—— 一次試験の受験状況を教えてください。

「1年目は4科目合格しました。
2年目は残った3科目を受けて、総得点で一次試験に合格しました。
その後、二次試験に進んだんですけど、合格できず、4年目にまた一次試験を受けることになりました。」

高田さんの受験経過を整理すると、次のようになる。

年数一次試験・二次試験の状況
1年目一次試験で4科目合格
2年目残った3科目を受験し、総得点で一次試験合格。二次試験1回目を受験
3年目二次試験2回目を受験
4年目一次試験に再挑戦し、4科目合格
5年目残った3科目を受験し、総得点で一次試験合格。二次試験3回目で合格

2年目と5年目は、科目合格による免除を使い、残った3科目を受験している。残った3科目の総得点で合格基準を満たし、一次試験を突破した。

暗記科目が苦手だった

—— 一次試験で苦手だった科目は何でしたか。

「暗記が苦手でした。
特に経営情報システムと経営法務は、苦手意識がありました。」

—— 経営法務はどう対策しましたか。

「まずは覚えるところから始めました。
予備校のテキストを使って、過去問を解いて、問題集を回していく。愚直にやるしかなかったです。」

経営法務は、理解だけで進められる科目ではない。覚えるべきものを覚え、問題で問われ方を確認する。高田さんにとっては、派手な工夫よりも、予備校の教材を使って愚直に回す科目だった。

経営情報システムが苦手でも、一次試験は総得点で突破できる

—— 経営情報システムはどうでしたか。

「本番で60点を超えた年は、一回もなかったかなという感じです。
大体50点から54点ぐらいで推移していました。」

経営情報システム単体では60点を超えなかったが、2年目と5年目はいずれも、残った3科目の総得点で一次試験に合格している。

苦手の裏で、経済と中小は得点源だった

—— 得意だった科目はありましたか。

「得意というより、経済学・経済政策と中小企業経営・政策は、やっていて楽しかった科目です。」

暗記科目では最後まで苦戦した高田さん。その一方で、経済学・経済政策と中小企業経営・政策は点を取りにいける科目だった。

経済学・経済政策は、わかるまで問題を回した

—— 経済学・経済政策はどう勉強しましたか。

「経済学・経済政策は苦手だという人が多いと思います。でも私は、わかるまで問題を解きまくりました。
他の科目は予備校の教材中心ですが、経済学・経済政策だけは市販の問題集も使っていました。具体的には、市販のスピード問題集と、過去問を10年分くらい単元別にまとめた過去問マスターという問題集です。」

—— ほかに使った教材はありましたか。

「ひと通り解いたあとに、石川秀樹先生の『速習!マクロ経済学』『速習!ミクロ経済学』にも時間を使いました。
これらの学習のおかげで5年目は、3問しか間違えませんでした。経済学・経済政策は、理解できるまで何度も回した方がいいと考えています。」

中小企業経営・政策は、中小企業白書と実務で得点源にした

—— 中小企業経営・政策はどうでしたか。

「中小企業経営・政策も、苦手意識はありませんでした。中小企業白書の傾向を見るのが、わりと好きだったんです。試験じゃなければいいのに、と思うくらいでした。」

—— 政策パートはどう対策しましたか。

「後半の政策パートは、実務で学んでいたことが活きました。会計事務所の勤務なので、補助金や助成金、法人税も普段から扱っていて。だから、あまり時間をかけなくても大丈夫でした。」

—— 5年目はどう位置づけていましたか。

「中小企業経営・政策は、5年目の得点源にしようと決めて臨みました。得点は88点でした。
ただ、その年は比較的やさしかったという話もあります。」

スタディング・TAC・LECをどう使い分けたか

—— 予備校は使いましたか。

「1年目はスタディングを使いました。
2年目からはTACで、科目の講座と二次試験の講座を受けていました。
5年目の一次試験はTACからLECに変更しました。経営法務で、LECの西村先生の講義がとてもわかりやすかったです。
LECに変更した理由は、4年目に一次試験でつまずいたあと、モチベーション維持のため、環境を変えたかったためです。」

1・2年目は月50〜70時間、4年目以降は月100時間超

—— 勉強時間はどれくらいでしたか。

「1、2年目は、月に50から70時間ぐらいでした。
平日に1.5時間ぐらいできればいい方。土日は授業を除いて5時間を2日、という感じでした。」

—— 仕事との両立はどうでしたか。

「会計事務所なので繁忙期があります。そのため、忙しい時期は勉強時間が確保しづらい時期もありました。」

—— 3年目以降はどう変わりましたか。

「3年目以降は、睡眠時間も削って平日3時間ぐらい確保していた記憶があります。特に4年目からは週30時間、月100時間を超えていたと思います。
繁忙期を言い訳にしないと決め、睡眠時間を削ってでも勉強時間を確保していました。」

一次試験は、科目間を空けないように回した

—— 科目数の多さにはどう対応しましたか。

「7科目あるのはしょうがないので、なるべく全科目に触れるスパンを短くしようと思っていました。そのため、平日だったら、1日最低でも2科目は必ずやっていました。

土日は、試験の時間割に合わせて順番にやっていました。1日目は経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理。2日目は経営法務、経営情報システム、中小企業経営・政策という感じです。

時間が空くと忘れてしまいますし、1科目に絞ると次の科目への切り替えもしづらくなります。だから、科目に触れるサイクルを短くすることを意識していました。」

一次試験は7科目ある。高田さんは、1科目を長く続けるより、科目間を空けずに短いサイクルで回すことを重視していた。

模試の点数が良すぎて油断した年もあった

—— 模試は受けていましたか。

「模試は、TACとLECの一次試験の模試を受けました。本番を意識して会場受験をしていました。」

—— 模試の結果はどう見ていましたか。

「私の場合は、逆に模試の点数が良すぎたんです。4年目の模試の結果が良すぎて油断してしまいました。結果的にその年の一次試験は合格できなかったので、反省しています。」

模試は現在地を知る材料になる一方で、点数が良すぎると油断にもつながる。高田さんにとって4年目の模試は、安心材料であると同時に、本番との距離感を見誤るきっかけにもなった。

一次試験の過去問とテキスト、苦手科目でどう使い分けたか

—— 過去問はどう使っていましたか。

「実は4年目までは、過去問をそこまで重視していませんでした。予備校の教材は過去問の重要論点も踏まえて作られているので、過去問を別でやらなくてもいいのでは、と思っていたんです。
でも、5年目はラストチャンスと思っていたので、やれることは全てやろうと思い、過去問にもきちんと向き合いました。過去問で不明点があった場合は、必要に応じてテキストに戻って知識を確認するようにしていました。」

一次試験は、苦手科目を抱えたまま突破した

—— 一次試験を振り返るとどうですか。

「暗記科目は、最後まで得意になったという感じではないです。経営情報システムも本番で60点を超えた年はありませんでしたし、苦手意識は残っていました。」

—— それでも突破できた理由は何ですか。

「科目全体で見ることだと思います。
苦手科目だけで考えると厳しいですけど、総得点でどう合格点に持っていくかを考えていました。」

高田さんの一次試験は、苦手を完全になくして突破したものではない。暗記科目に苦戦し、経営情報システムでは60点を超えない年もあった。それでも、科目全体で合格点に届かせるために、予備校、過去問、テキスト、模試との距離感を修正していった。

次回予告

次回は、二次試験を3回受けた高田さんが、手応えのない試験で何を信じ、何を続けたのかを聞く。

手応えがなくても合格した中小企業診断士二次試験、信じた型と勉強会|STCラボ

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しばたろー
大手素材企業でマーケティング、新規事業創出、M&A、スタートアップの事業化支援などに従事しながら、中小企業診断士としても活動。 専門領域は中小企業のマーケティング、新規事業創出、オープンイノベーション。