Tさん

  • 合格年度: 2025年度(令和7年度)
  • 受験年数: 1.5年
  • 学習スタイル: TAC 1.5年コース(通学+通信)
  • 試験結果: 一次試験:1.5年コースで合格 / 二次試験:2025年度 一発合格

月の半分を海外出張で過ごす。時差、移動、現地業務——そんな過酷な環境で、中小企業診断士一次試験に挑んだTさん。
「ダメ元でいいや」と思いながら手にした7科目分のテキスト。情報システムで「タイパ・コスパが悪い」と見極めて深追いしない判断を下し、財務は「短時間でもいいから」と毎日触れ続ける継続力を発揮。 「字が汚い」という自身の弱点を、PowerPointを用いた独自の暗記ツール化で克服する工夫。1.5年間、一日も休まなかった理由は——「追加でお金払うのは嫌だった」という、極めて現実的な動機だった。


目次

  1. なぜ中小企業診断士だったんですか?
  2. TACの1.5年コースを選んだ理由は?
  3. 月半分の海外出張、どうやって勉強時間を確保しましたか?
  4. 「情報システム」を戦略的に捨てた判断とは?
  5. 「財務は毎日やる」と決めていた理由は?
  6. PowerPointによる独自の暗記ツールとは?
  7. 一次試験突破の要因と、その後の動きは?

Q1. なぜ中小企業診断士だったんですか?

――中小企業診断士を目指したきっかけを教えてください。

定年後、どうしようかなって悩んだ時があったんですよね。私は製造業で海外ビジネスに十数年従事しており、国内業務の経験がほぼゼロなんです。海外しかずっとやってきていないので、国内関係で例えばどこかの会社に定年後行くっていうのは、おそらく難しいだろうなと思っていて、資格を持っといた方がいいのかなという漠然とした思いから診断士を選びました。

――本業との親和性もあったのでしょうか。

会社の経営とか、事業戦略立案とか、その辺りでやっている仕事の内容と親和性が高いなと感じていました。あと、PLは読めてもそれ以外の財務の知識が圧倒的に不足していたので、そういった知識を知っておかなきゃいけないなと思ったのも理由の一つです。

――もう一つ、ご家族に関連した受験のきっかけもあったそうですね。

僕が勉強している姿を見ることで、子どもがもうちょっと勉強するきっかけになればいいな、というのもありました。多感な時期の子どもたちに「勉強しろ」と口で言うのではなく、父親が毎日机に向かう姿を見せる教育法を選びました。

Q2. TACの1.5年コースを選んだ理由は?

――2024年1月にTACの1.5年コースに申し込まれたそうですが、なぜその期間に?

1年でもよかったんですけど、自分にできるかなという自信が若干なかったので1.5年を選びました。TACを選んだのは、ネットで調べて「どこでも見かける名前」だったことと、会社から校舎が近かったのが決め手です。

――7科目分の膨大なテキストが届いた時はどう思いましたか。

これ全部勉強するのかなって、最初は「多分ダメ元でいいや」くらいの気持ちでやっていましたね。「多分無理だろう」というのが正直なところでした。

――それでも挫折せずに続けられた原動力は何だったのでしょうか。

実は初回授業に3〜4回遅れて参加していたのですが、「お金を払ってしまったので、とりあえず遅れてる分だけ取り返そう」と思ったんです。お金を払った以上、やらないともったいないし、追加でお金払うのは嫌だった。この極めて現実的な動機が、1.5年間自分を支え続けることになりました。

Q3. 月半分の海外出張、どうやって勉強時間を確保しましたか?

――仕事と勉強の両立、特に時間のコントロールはどのようにされていましたか。

何時間勉強すると決めるのではなく、やんなきゃいけない量を決めていました。「今日はここからここまで絶対やろう」と毎回決めて進めることで、結果的に平日は3時間ほどの学習時間が生まれました。仕事を7時までに終わらせて8時から勉強し、週末は5〜6時間というリズムを1.5年間守り続けました。

  • 平日: 量を基準に区切り、結果として約3時間を確保
  • 休日: 土日は5〜6時間を維持

――月の半分が海外出張という過酷な環境での継続は大変だったのでは?

飛行機の移動や現地での時差ボケもあり、夜起きているのがかなりしんどい時もありました。そんな時はTACのオンライン授業や、スマホで過去問を解けるオンライン問題集といったデジタルツールを活用しました。どこにいても学習を継続できるツールの充実が、海外出張という制約を乗り越える大きな鍵になりましたね。

Q4. 「情報システム」を戦略的に捨てた判断とは?

――1年目は4科目を受験し、経済と法務は合格したものの、情報システムと中小は不合格だったそうですね。

情報システムは、勉強したこと以外の範囲がものすごいいっぱい出るんですよ。全く知らないのが半分くらい出ているイメージで、結局勉強しても運要素が強いのか現場対応力が試されるのか、「コスパがかなり悪いな」と感じました。ネットの記事も色々と読みましたが、どこから出るのか分からないので、途中で「タイパ・コスパが悪い」と思って深追いするのをやめたんです。

――2年目の5科目受験の際、その苦手意識は克服できたのですか。

克服はしてないです。結局、情報は最悪40点でもいい、足切りにならなければいいやと割り切っていました。その分、財務や中小で点数を稼げばいいという戦略です。完璧を求めず、戦略的に深追いせずに勝てるところで勝つという判断をした結果、2年目は情報システムでも60点を確保することができました。

Q5. 「財務は毎日やる」と決めていた理由は?

――他の科目を割り切る一方で、財務会計だけは特別扱いだったそうですね。

財務だけは、短時間でもいいから毎日やるようにしていました。PLは読めてもそれ以外の知識がゼロだったので、「計算はやんないといけない」という直感があったからです。

――具体的にはどのようなスケジュールで回していたのですか。

一週間のなかで「今日は情報、今日は中小、今日は運営」というように各科目の曜日を決めていたのですが、それとはプラスアルファで、財務だけは毎日少しずつ触れる形にしていました。そうすることで、だんだんと計算力が定着していきましたね。

また、TACの授業が終わった科目も完全に忘れないよう、少しずつ触れるように科数をクロスオーバーさせて忘却を防いでいました。この緻密な学習設計が、1.5年間の大きな土台になったと思います。

Q6. PowerPointによる独自の暗記ツールとは?

――PowerPointを使って暗記用スライドを自作されていたと伺いました。

テキストを読んで覚えられないものは、全部PowerPointにまとめていたんです。自分で書いて覚えてもいいんですけど、私、字が汚いので(笑)。PowerPointに文字を打ち込んで、覚えられない用語を意味と一緒にスライドとして項目ごとに整理していきました。

――それをどのように活用されていたのですか。

作ったスライドを携帯(スマホ)に入れて持ち歩いて見ていました。飛行機の移動中や、現地でのちょっとした空き時間など、どこにいてもスマホを開けば自分だけの暗記ツールにアクセスできるようにしていました。

テキストをそのまま読み返すのではなく、一度自分で理解した内容をビジュアル化して見返すこの方法が、記憶の定着に大きく貢献しました。仕事でも日常的にPowerPointやOneNoteを使っていたため、ITツールへの抵抗感がなかったことも味方したと思います。

Q7. 一次試験突破の要因と、その後の動きは?

――2025年8月の一次試験本番では、直前の粘りが活きたそうですね。

当日の朝、まだ覚えていなくて読んでいたところが本番で出たり、TACの模試で出た問題が1〜2問出たりしました。自分では「たまたま運が良かった」とも思っているのですが、試験当日の朝のギリギリまで諦めずに粘り強く拾い続けた姿勢が、結果として合格を引き寄せたのかもしれません。

――一次試験の手応えを得て、すぐに二次試験対策に動かれたのですか。

自己採点で「多分受かった」と確信したので、一日の猶予もなく翌日にはTACの「財務特訓講座」のようなものを申し込みに行きました。それから翌日以降は事例Ⅳをずっとやっていましたね。一次から二次まではわずか2ヶ月半しかなく、以前お試し演習で惨憺たる点数だった記憶があったので、とにかく必死に突き動かされるようにスタートを切りました。


投資したお金を無駄にしないという現実的な動機から始まり、徹底的な効率化と独自の工夫で一次試験を見事突破したTさん。しかし、その先に待つ二次試験は、さらなる修羅場の連続でした。

次回、【第2回:二次試験編】(近日公開予定)。
「2ヶ月半で60事例超を初見で解き続けた」という圧倒的な演習量の真実と、「何を書いても点数が上がらない」という絶望から抜け出した転機をどう掴んだのか。そして本番の事例Ⅳで訪れたパニック、「退出しようかと思った」ほどの修羅場。「手応えのなさ」と「合格」のパラドックスに迫ります。