中小企業診断士

中小企業診断士として市場価値を向上させる方法~1年目からのキャリア戦略~

中小企業診断士として仕事を安定的に獲得していくためには、自身の「市場価値」を高めることが欠かせません。

資格取得をゴールにしてしまい、そこから先のキャリアや専門性を磨く取り組みを怠っていると、なかなか案件が取れなかったり、単価が上がらなかったりといった課題に直面します。

特に1年目の中小企業診断士の場合は、「自分ならではの強みは何か?」「どう実績を積み上げればいいのか?」と悩む人も多いでしょう。

本記事では、中小企業診断士としての市場価値向上がいかに重要か、そしてどのようなポイントを押さえて行動すれば、より高い評価と安定した仕事獲得につながるのかを詳しく解説します。

なぜ市場価値向上が必要か

資格取得がゴールになっている診断士も多い

中小企業診断士を目指す過程では、難関試験に合格することを第一目標に掲げがちです。試験勉強に集中していた期間が長いだけに、「試験に合格して、二次試験や口頭試験も突破できればもう安心」と思ってしまう方も珍しくありません。

しかし、資格取得自体はあくまでスタートラインのひとつに過ぎません。

合格してから初めて、実務を通じて自分の強みを磨き、クライアントから信頼される診断士へと成長する必要があります。試験合格直後のタイミングで、「いかに市場価値を高めるか」を強く意識できるかどうかで、その後のキャリアに大きな差がついてしまうのです。

安定的に仕事を獲得するために必要

市場価値が高い診断士は、案件獲得の安定性がまったく違います。「あの診断士はよく話題になっている」「あの人に頼めば、きちんと成果を出してくれるらしい」と評判が広がれば、自然とクライアント側から声がかかる機会が増え、受注のための営業活動に割く労力が減っていきます。

逆に、市場価値が低かったり、「どんな仕事が得意なのか分からない」「まだ実績が少なくて不安」といった印象を持たれてしまうと、競合との比較で負けてしまうことも多々あります。特に1年目の診断士はまだ知名度が低い分、積極的に価値を示す努力が必要です。

単価向上にもつながる(最初のうちは安い)

中小企業診断士として活動を始めたばかりの頃は、どうしても報酬単価を低めに設定して仕事を受けるケースが多いでしょう。

これは実績不足を補うための一時的な策としては仕方ない部分もありますが、ずっと低い単価のまま働き続けるのは自分にとっても不利ですし、市場全体にも良い影響を与えません。

しかし、市場価値を高めて「この分野ならあの人に任せたい」と指名されるようになると、少し高めの報酬を提示しても受け入れてもらえる可能性が高まります。

専門性や信頼度を積み上げることで、単価アップの交渉をしやすくなるのです。

市場価値向上のポイント

1.専門性の深掘り

(1)試験勉強で得た強みをさらに磨く 

中小企業診断士の試験では、財務・会計、マーケティング、運営管理、人事・労務、経営戦略など幅広い分野を勉強します。そのなかでも、比較的得意だった科目や、興味を引かれた領域はなかったでしょうか。

まずはその「強みのタネ」にフォーカスし、さらに専門書を読んだり、セミナーに参加したりして知識を掘り下げましょう。試験での学びは基礎的なものが中心ですから、実務に耐えうるレベルにまで昇華するには継続的な学習が不可欠です。

(2)実務経験を積み上げることで専門性に深みを出す 

実際に企業の経営課題と向き合う場面では、本や講義で学んだ知識だけでは足りない場合も多々あります。クライアントの事情や業界背景を踏まえながら、どのようにアプローチするのかは実践を通じて身につけるものです。

最初は小さな案件でも構いません。たとえば友人や知人が経営する店舗の売上アップ施策を一緒に考えてみたり、先輩診断士の業務にアシスタントとして参加して現場を学ばせてもらったりするのも有効です。

2.セミナーや出版でのブランディング

(1)セミナーの講師としての登壇 

自分の専門分野を形にし、外部へアピールするための手段として「セミナーや勉強会の講師を引き受ける」方法があります。これは、中小企業診断士協会や商工会議所、企業の研修などさまざまな場面で需要があります。

  • メリット:講師として話すことで、自分の強みを明確化できるだけでなく、「講師経験あり」という実績が加わり、ブランディング向上に直結する。 
  • 注意点:最初は無償や低報酬の登壇になるかもしれませんが、「経験を積むこと」を目的に取り組むとよいでしょう。

(2)書籍の出版や寄稿・コラム連載 

出版と聞くとハードルが高いと思うかもしれませんが、近年ではビジネス系の雑誌やWebメディアでの寄稿、電子書籍での出版など、さまざまな形で自分の考えを発信できます。

執筆実績が増えるほど「文章としてロジカルにまとめられる診断士」としての評価が高まり、信頼感もアップします。

出版や寄稿時のポイント

読者が「知りたい」「役立つ」と思うテーマ選びを意識する。具体的には、補助金・助成金、DX推進、マーケティングの最新手法など、中小企業が興味を持ちやすいネタが効果的。

 3.1年目、2年目のうちは多くの仕事にチャレンジして実績をつくる

(1)初期は幅広く経験を積む 

「自分がどの分野に本当に向いているのか」「どのようなクライアントと相性がいいのか」は、やってみないと分からないものです。

1年目や2年目の初期段階は、多少忙しくなっても構わないので、幅広い案件にチャレンジしてみましょう。

  • 診断士協会からの派遣業務 
  • 先輩診断士のサブコンサルタント 
  • 自治体や商工会議所の補助金支援 
  • 地域の企業へ訪問し、経営課題の簡易コンサル

こうした経験を通じて「自分は財務系の案件が得意」「飲食店の業務改善が面白い」といった発見を得られることが多いです。

(2)実績を積み上げるメリット 

  • 信頼性の向上:案件数や成功事例が増えるほど、クライアントから「何件もこなしているプロ」と見られやすくなる。 
  • スキルアップ:多様な課題に触れられるため、短期間で現場対応力が飛躍的に向上する。 
  • ネットワーク拡大:協会や先輩、クライアント、他の専門家など、多くの人とつながれるチャンスが増える。

(3)実績がある程度できたら、専門性を発揮できる分野を深堀 

ある程度の案件実績を積んだら、自分の中で「どの分野で戦うか」を絞り込み、さらなる専門性を追求すると、より高い市場価値を得やすくなります。

  • 例:補助金支援に強い → 補助金の最新情報を常に収集し、成功事例を具体的に発信する。 
  • 例:サービス業の売上アップ支援に強い → 飲食店や美容サロンなどの業務改善ノウハウを体系化する。

このように「自分が得意とする専門領域」を明確に提示できるようになると、クライアントからの信頼度も高まるだけでなく、「あの分野ならあの診断士」という口コミ効果も期待できます。

まとめ

中小企業診断士1年目の方が、市場価値を向上させるには「実務経験を積むこと」と「自分の強みを深堀りすること」のバランスを意識するのが鍵となります。

資格を取得しただけで満足してしまうのではなく、その後の努力次第でどれだけ成長し、市場から認められるかが大きく変わるのです。

市場価値が向上すれば、安定的な仕事獲得や報酬単価アップだけでなく、業界内外から「ぜひ一緒にやりたい」という声がかかる機会も増えていきます。

1年目はなかなか成果が見えづらく、もどかしい部分もあるかもしれませんが、地道な行動の積み重ねこそが、あなたの診断士としての価値を高める近道です。まずは手の届く範囲から少しずつ行動し、目指すキャリアを実現してください。

ABOUT ME
アバター画像
しばたろー
大手素材企業でマーケティング、新規事業創出、M&A、スタートアップの事業化支援などに従事しながら、中小企業診断士としても活動。 専門領域は中小企業のマーケティング、新規事業創出、オープンイノベーション。