「人材育成なんて不要だ!」と思っている経営者はいませんよね
むしろ人材育成を重要な経営課題ととらえている経営者が多いです
しかし、中小企業では人材育成に積極的に取り組めていない現状があります
コロナ禍で世の中が大きく変わりました
今後もDX化やSDGsへの対応に加えて、新型コロナのような予測できない脅威に備えないといけません
ピンチを乗り切るには、会社が発展するには、「ヒトの力」が不可欠です
人材育成に力を入れている企業は売り上げが伸びている傾向にあります
ここでは、中小企業で取り入れられる人材育成の方策やポイントをご紹介します
中小企業の人材育成の課題
中小企業が人材育成に取り組めていない背景には、次のようなことがあると思います
- 時間がない ⇒一番多い理由は「時間がない」ではないでしょうか?
- 社長も現場仕事をしていることが多い
 - 先輩社員も自分の業務で手一杯
 - 人手不足で、目の前の仕事をこなすのに忙しい
 
 - ヒト・モノ・カネが足りない ⇒時間があったとしても、リソースが足りないからできないと思ってませんか?
- ヒト:指導できる人材がいない
 - モノ:育成プログラムがない、研修場所がない
 - カネ:人材育成にかけられる資金がない
 
 - 入社が少人数かつ不定期
- いつ、どのようにやったらよいかわからない
 - 育成ノウハウがたまらない
 
 
中小企業では体系立てた計画を立てにくいですよね
すべて自社でやろうと思わなくてOKです
外部リソースをうまく使いましょう
中小企業で取り入れたい人材育成の方策
おすすめの方策を6つご紹介します
取り入れられることから取り組めばOKです
すでに取り入れられているものは、形骸化していないか?目的に合って機能しているか?チェックしましょう
- OJT
 - OFF―JT
 - メンター制度
 - 資格取得補助制度
 - 社内短期留学
 - ジョブローテーション
 
①OJT
On the Job Trainingの略で、職場の上司や先輩が、実際の仕事を通じて指導することです
OJTをまったくやっていないという会社はないでしょう
ですが、正しく行えていますか?
【OJTのコツ】
- 見て覚えろ!ではなく、見本を見せたうえで、後輩に実践させてチェックをする
 - 達成度合い、改善点をフィードバックする
 - 1回言ったからわかってるだろう!ではなく、わからないことがあったらいつでも聞ける体制を
 - つめこみではなく、習熟度にあわせて次の段階へ
 - 自己流のやり方で教えないように。聞く人によって違うと、後輩はとまどいます
 
②OFF―JT
OFF-JTとはOff the Job Trainingの略で、職場や通常の業務から離れて行う教育訓練のことです
外部講師による集合研修や外部のセミナー・研修プログラムへの参加、通信教育などの方法があります
【OFF-JTの効果】
- 安定した提供品質の研修で効率的に学べる
 - ビジネススキルやマネジメントスキル、ヒューマンスキルなど日常業務では習得が難しいスキルの習得に向いている
 - 普段接しない社内外の人材交流ができる
 - 業務を離れることで、社員が刺激や新たな気付きを得られる
 
費用がかかりますが、自社内で準備をして、講師役の社員のリソースを使うと考えると、コストメリットがあると考えられませんか?
自社業務に必要なスキル習得にはOJTを、社会で汎用的に役立つスキルの習得にはOFF-JTを活用するとよいでしょう
③メンター制度
業務指導をする先輩社員とは別の社員をメンターとして任命し、新入社員(メンティ)の相談役とする制度です
【メンター制度の効果】
- 新入社員が職場環境や人間関係などOJTをしてくれる先輩社員には言いづらい不安や悩みを話せる
 - 社内の関係構築のスピードが上がるため、業務の円滑化や相互理解に繋がる
 - メンターにとっては、今後リーダーや管理職を見据えた部下育成のスキルを身につけられる
 
【メンター制度をうまく機能させるコツ】
- 業務で直接関わらない社員をメンターに任命する
 - それなりの規模であれば、他部署の人材だとなおよい
 - 年齢や入社年次が近い社員を任命する
 - メンター期間は半年程度が適当
 - 月1回程度面談の機会を設ける
 - 問題があれば、メンターが早期に吸い上げ、関係者と連携して解消する
 - 周囲もメンター制度を理解できるよう経営者から説明をしておく
 
④資格取得補助制度
金銭面の補助、勤務時間内に習得をできるような時間的補助などがあります
金銭面の補助としては、以下のような内容が考えられます
- 受験勉強に関わる費用や受験料の補助
 - 資格の登録費用、維持費用の補助
 - 合格祝い金の支給
 - 資格手当を付与
 
【資格取得補助制度のポイント】
- 対象は会社に貢献できる資格であること
 - 補助率・補助額を明示
 - 対象者、補助条件を明示
 - 社員全員に提示し、平等にチャレンジできる仕組みとする
 - 業務に必須の資格は、会社負担が原則
 
⑤社内短期留学
1日~2週間程度、社内の別部署に留学する制度です
例えば、経理担当者が営業部に、営業担当者が仕入・倉庫などのバックオフィス部門に、など
【社内短期留学の効果】
- 自身の担当する業務との関係性が分かり、業務理解が進む
 - 社内の業務改善や取引先・顧客への提案をこれまでにない視点でできるようになる
 - 新たな創意工夫が生まれやすい風土になる
 - 社内の関係性強化が図られる
 - 受入部署では教える体験により業務の再確認ができる
 
⑥ジョブローテーション
異動ですが、いわゆる異動と違うのは、ジョブローテーションは「人材育成」の観点を重視した異動ということです
【ジョブローテーションの効果】
- 様々な職種を経験させることで社員の適性を見出せる
 - 社員自身が新たな自分の適性を発見できる
 - 適材適所の配置が可能となる
 - 他部門との交流が活発化
 - 視野が広がり、新規事業のアイディアや生産性向上の提案などが生まれる
 - マンネリを解消し、社員のモチベーションアップ
 - 幅広く経験させ、将来の幹部候補を育成できる
 
【ジョブローテーションをうまく機能させるコツ】
- 人材育成計画を策定する
 - 本人の希望も聞きながら決める
 - 会社が期待していることを伝える
 
人材育成を軌道に乗せるには
人材育成は継続することが大事です
制度を立ち上げて、軌道に乗せるには、以下のような取り組みが必要です
- 人材育成計画の策定
 - PDCAを回す
 - 社内体制整備
 - 指導者の育成
 - マニュアル化
 - ベテラン社員のノウハウを形式知化
 - 助成金の活用
 - 教育訓練給付制度
 
①人材育成計画の策定
step1 現状の人的リソースを把握します
step2 会社が今後目指す姿、目標にあわせて、どのような人材が必要か考えます ↓
step3 人材育成計画を会社の戦略にあわせて作成します
②PDCAを回す
PDCAは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)です
これを繰り返して、計画の進捗を確認します
人材育成においても、やりっぱなしではなく、PDCAを回すことが大事です
③社内体制整備
年1回の全体ミーティングなど経営者から今後の会社のビジョンを全社員に伝える場を設けます
会社が目指していること、現状の定期的な情報発信も有効です
社員が今のままでいいととどまらず、自ら成長したい!と思える風土を醸成します
上司は、社員がチャレンジしたいことを受け止め、いつも応援する態勢でいましょう
④指導者の育成
指導者には、以下のようなスキルが求められます
- 業務経験、業務知識
 - わかりやすく教えるアウトプットの力
 - 後輩の習熟度、理解度を判断する観察力
 - コミュニケーション力
 - 部下の育成状況を把握し、上司と連携する橋渡し役
 - 後輩のモチベーションを高める励ます力
 - 育てる熱意
 
⑤マニュアル化
中小企業では、業務マニュアルが作成されていないことがよくあります
日々の業務が忙しくマニュアル作成をする時間が取れない、昔から同じ人が担っているため問題が起きない、新入社員には口頭説明と実地訓練で教えている、等々
今は問題がないかもしれませんが、適正な人材育成をするには、業務マニュアルを作成しましょう
【マニュアル作成の効果】
- 教わる新入社員は、目で見て理解できるため、理解力が高まる
 - まずはマニュアルで確認して、わからないことは先輩社員に聞くようになるため、指導者の負担が減る
 - 個々のやり方で行われている業務の標準化が図れる
 - マニュアル作成の過程で、正しい業務フローの確認ができる
 - マニュアルがあると、個々が調べる時間が減り、作業効率が高まる、作業時間が短縮できる
 - ノウハウが蓄積される
 
【マニュアル活用のコツ】
- 複数の目で内容をチェック
 - 変更点があれば、都度改訂をする
 - 定期的に見直しを
 - マニュアルの在りかを明確にする
 
⑥ベテラン社員のノウハウを形式知化
ベテラン社員がもつ個人の経験や勘に基く技術・知識は、会社の財産です
伝承するには、OJTが最も有効ではありますが、会社の財産として蓄積するためには、文書化しておくとよいでしょう
あるいは、文書にするのは難しいノウハウは、動画制作がおすすめです
例えば製造業であれば、ベテラン社員の手の動き、動作、動線など、動画にするとわかりやすいです
⑦助成金の活用
資金不足で人材育成は難しいと思っている企業では、助成金の活用を検討してはいかがでしょうか?
代表的なのは、厚生労働省の「人材開発助成金」です
<概要:厚生労働省HP 参照> ※2022年11月時点の情報です
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
Ⅰ 特定訓練コース
正社員に対して、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、若年者への訓練、労働生産性向上に資する訓練等、訓練効果の高い10時間以上の訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
II 一般訓練コース
正社員に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための20時間以上の訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
III 教育訓練休暇等付与コース
有給教育訓練休暇等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成
そのほか、有期契約労働者向け、建設関連に従事している労働者向け、障がい者向け労働者の助成制度があります
2022年4月に新設された「人への投資促進コース」はデジタル人材・高度人材を育成する訓練の経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度で注目されています
地方自治体でも中小企業の人材育成を支援する助成制度を作っていることがあります
所属の自治体のHP等で情報収集をしてみてください
⑧教育訓練給付制度
厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです
支給申請は、社員の居住エリアを管轄するハローワークで受付けます
社員が自主的に自己研鑽をするために使える制度ですが、制度を知らない社員が多くいると思われます
会社からこの制度の活用について案内するのもよいでしょう
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
まとめ
中小企業は大企業に比べて経営リソースが少ないですが、社員へ社長の目が届く、意思決定が速い、という圧倒的な利点があります
うちではそんな余裕がないから無理・・と言わずに、できることから少しずつ取り入れてみてください
変化に対応しなければいけない今こそ人材育成にぜひ取り組んでいただきたいです
経営者の想いはきっと社員に伝わります
